約13年間にわたり多くの中小企業の設備投資や新製品開発を支援してきた「ものづくり補助金」。さらに2025年度から開始された「新事業進出補助金」。
2026年度からは、この2つの制度が統合され、新たに「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」としてスタートしました。
設備投資を検討している企業や、新市場への進出、新製品・新サービス開発を考えている企業にとって、2026年度を代表する大型補助金制度といえるでしょう。
一方で、
- 自社はどの申請枠が対象になるのか
- ものづくり補助金との違いは何か
- 賃上げ要件はどれくらい厳しいのか
- 返還リスクはあるのか
など、多くの経営者が疑問を抱えています。
この記事では、中小企業診断士の視点から、
- 制度の概要
- 3つの申請枠の違い
- 注意すべき要件
- 採択率を高めるためのポイント
- 今から準備すべきこと
まで詳しく解説します。
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金とは?
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金は、中小企業・小規模事業者等が、
- 新製品の開発
- 新サービスの提供
- 新市場への参入
- 海外展開
を行う際の設備投資等を支援する国の大型補助金です。
従来の
- ものづくり補助金
- 新事業進出補助金
を一本化した制度であり、それぞれの特徴を引き継ぎながら、より分かりやすい制度へ整理されています。
対象となる企業
原則として全国の中小企業・小規模事業者等が対象です。
2026年度公募概要
- 対象地域:全国
- 対象業種:原則すべて
- 申請締切:2026年10月30日(金)18時
3つの申請枠を比較
制度には大きく3つの申請枠があります。
| 申請枠 | 補助上限 | 補助率 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 革新的新製品・サービス枠 | 最大2,500万円 | 1/2 | 新製品・新サービス開発 |
| 新事業進出枠 | 最大7,000万円 | 1/2 | 新市場への進出 |
| グローバル枠 | 最大7,000万円 | 2/3 | 海外展開 |
※従業員数によって補助上限額は異なります。
さらに、賃上げ特例を満たすことで補助上限額が引き上げられる場合があります。
革新的新製品・サービス枠とは?
この枠は、従来の「ものづくり補助金」に最も近い制度です。
対象となるのは、
- 新製品の開発
- 新サービスの開発
- 新たな価値を提供する技術開発
などです。
重要なのは、
単なる設備更新では採択されない
という点です。
例えば、
× 老朽化した機械を新しい機械へ更新
だけでは対象になりません。
一方で、
〇 AIを活用した検査装置を導入し、新しい品質保証サービスを開始する
〇 独自技術を活用した新製品を開発する
など、新たな価値を生み出す取り組みが求められます。
新事業進出枠とは?
こちらは昨年度スタートした「新事業進出補助金」の後継制度です。
特徴は、
既存事業とは異なる市場へ参入すること
です。
例えば、
飲食店が冷凍食品メーカーになる
製造業が介護機器市場へ参入する
印刷会社がDXサービス事業を始める
など、
「新しい市場」
「新しい顧客」
「新しい製品・サービス」
が求められます。
単なる事業拡大ではなく、既存事業との差別化が重要になります。
そのため、
- 新市場であること
- 新規顧客であること
- 新製品・サービスであること
を事業計画で明確に説明する必要があります。
グローバル枠とは?
海外市場への販路拡大を支援する制度です。
対象となるのは、
- 海外販路開拓
- 輸出事業
- 海外市場調査
- 海外展示会への出展
- 輸出体制の整備
などです。
特徴として、建物費も対象となるため、輸出向け工場や物流拠点などの整備にも活用できます。
また、海外渡航費や市場調査費も補助対象となるケースがあります。
採択を目指すには、
- 対象国の市場分析
- 販売戦略
- 法規制への対応
- 現地販売体制
まで具体的に示すことが重要です。
最も注意したい「賃上げ要件」
今回の制度で特に注意したいのが、
補助金採択後の賃上げ要件
です。
補助事業終了後、3〜5年間にわたり、以下の目標を達成しなければなりません。
①給与総額
1人当たり給与支給総額を
年平均3.5%以上
増加させること。
②最低賃金
事業場内最低賃金を地域別最低賃金より
30円以上高く設定
すること。
返還リスクにも注意
これらの要件を達成できなかった場合、補助金の一部、または全額返還となる可能性があります。
そのため、「採択されるためだけ」の無理な賃上げ計画は危険です。
採択後まで見据え、
- 売上計画
- 利益計画
- 人員計画
- 資金繰り
を総合的に検討する必要があります。
付加価値額の要件もある
賃上げだけではありません。
付加価値額についても、年平均4%以上の成長が求められます。
付加価値額とは、
営業利益+人件費+減価償却費
で計算されます。
つまり、設備投資による生産性向上と利益増加が前提となっています。
採択率を高めるためのポイント
これまでの補助金審査でも重視されてきたポイントは共通しています。
新規性
「他社と何が違うのか」
「新しい価値は何か」
を具体的に示します。
市場性
市場規模や顧客ニーズをデータで説明します。
「市場が成長している」だけでは不十分です。
実現可能性
- 人材
- 技術
- 設備
- 販売体制
など、実現できる根拠を示すことが重要です。
収益性
補助金終了後も継続して利益を生み出せるかが評価されます。
補助金ありきの事業では採択されにくくなります。
今から進めるべき準備
申請開始を待ってから準備すると間に合わないケースも少なくありません。
以下の準備は早めに進めることをおすすめします。
①事業の棚卸し
現在の事業と新規事業を整理します。
②市場調査
競合分析
市場規模
ターゲット顧客
ニーズ分析
を行います。
③設備の見積取得
設備メーカーとの相談を開始し、複数社から見積書を取得しておきます。
④収支計画の作成
売上
利益
キャッシュフロー
を現実的に作成します。
⑤賃上げ計画
採択後も達成できる水準を検討します。
無理な数字は返還リスクにつながります。
⑥資金繰りの確認
補助金は後払いです。
設備投資を先に実施する必要があるため、
金融機関との資金調達も早めに相談しておきましょう。
よくある質問(FAQ)
Q. ものづくり補助金はなくなったのですか?
はい。2026年度からは「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」に統合されました。
Q. 単なる設備更新でも申請できますか?
原則として難しいでしょう。新製品・新サービスの開発や新市場への進出など、事業としての新規性や付加価値向上が求められます。
Q. 補助金は採択後すぐに入金されますか?
いいえ。補助金は後払い(精算払い)が基本です。設備投資などを実施した後、実績報告・審査を経て交付されるため、事前の資金繰りが重要になります。
Q. 賃上げ要件を達成できなかった場合はどうなりますか?
要件未達の場合、補助金の一部または全額の返還を求められる可能性があります。実現可能な事業計画・賃上げ計画を策定することが重要です。
まとめ
「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」は、従来の「ものづくり補助金」と「新事業進出補助金」を統合した新制度であり、中小企業の成長投資を後押しする重要な支援策です。
一方で、設備投資だけでなく、「新規性」「市場性」「収益性」「実現可能性」に加え、賃上げや付加価値向上の達成も厳しく評価されます。採択後の返還リスクも踏まえ、無理のない事業計画を作成することが不可欠です。
また、補助金は後払いのため、資金繰りや見積取得、市場調査などの準備を早めに進めることが採択への近道となります。
2026年10月30日の申請締切に向けて、公募要領や最新情報を確認しながら、余裕を持って準備を進めましょう。適切な事業計画を策定できれば、新たな成長への大きな一歩となるはずです。
当方では本サービスをはじめとした公的支援の利用についてもご相談を承っています。お気軽にご相談ください。
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