中東情勢による原油高騰の影響と中小企業支援策|資金繰りから成長投資まで3制度を解説

中東情勢による原油高騰と中小企業の資金繰りイメージ 補助金・助成金
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中東情勢の緊迫化により原油価格が高止まりし、「仕入コストや光熱費が上がって資金繰りが厳しい」という中小企業が増えています。本記事では、国が実施・拡充している支援策の中から、資金調達を支える2つの制度と、成長投資を後押しする補助金の合計3つを、対象要件・限度額・申請期限まで整理してご紹介します。

中東情勢は中小企業にどのような影響を及ぼしているのか

原油価格の推移と背景

2026年春、中東情勢の緊迫化を受けて、国際指標のひとつである北海ブレント原油価格が一時1バレル100ドルを超えました。その後相場はいったん下落したものの、2026年7月にも中東情勢や原油輸送への懸念を背景に再び100ドルを上回る場面があり、価格変動の大きい状況が続いています。

北海ブレント原油は、WTI(米国)・ドバイ原油と並ぶ世界三大原油指標のひとつで、日本を含む多くの国の原油取引価格の目安として使われています。この指標が大きく変動しているということは、輸入に依存する日本のエネルギー・原材料コストにも影響が波及しやすいことを意味します。

コスト増が経営を圧迫する仕組み

原油価格や輸送コストの上昇は、燃料費・原材料費・物流費などを通じて、中小企業の収益を圧迫するおそれがあります。とくに以下のような業種では、コスト増の影響を受けやすい状況です。

  • 運送業:燃料費(軽油・ガソリン)の高騰が直接コストを押し上げる
  • 製造業・金属加工業:原材料や資材の仕入価格上昇
  • 飲食業:食材の仕入コストや物流費の上昇

今後の情勢と仕入価格への影響を、引き続き注視する必要があります。

こうした状況を受け、国は日本政策金融公庫の各支店や、全国の信用保証協会・商工会・商工会議所などに「特別相談窓口」を設置し、影響を受ける中小企業向けの支援策を実施しています。

◆北海ブレント原油価格の1年間の推移

北海ブレント原油価格の推移(2025年8月〜2026年8月)

支援策の対象となる事業者・全体像

今回ご紹介する3つの支援策は、以下の中小企業者を対象としています。

項目内容
業種原材料・エネルギーコストの上昇や、取引・生産の減少など中東情勢の影響を受ける事業者
地域全国
期間セーフティネット保証5号:現在の583業種での認定申請締切は9月30日/新事業進出・ものづくり商業サービス補助金(第1回):申請受付期間は9月30日〜10月30日18:00
ポイント中東情勢による資金繰りの悪化を緩和する制度設計

支援策は大きく分けて、借入を支える2つの制度(①セーフティネット貸付、②セーフティネット保証5号)と、設備投資を支える③新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の3つです。

事業者様の状況に応じて、たとえば次のように活用できます。

  • 燃料費の高騰に悩む運送業 → 「セーフティネット貸付」で当面の資金を借り入れ。要件を満たせば金利優遇も(①)
  • 追加の資金調達を検討している飲食業 → 「セーフティネット保証5号」で別枠の借入を検討(②)
  • 新商品開発で活路を開きたい金属加工業 → 補助金を活用した設備投資を検討(③)

なお、いずれの制度も、社会的・経済的環境の変化などにより一時的に業況が悪化しているものの、中長期的には業況の回復・発展が見込まれることが前提となる点は共通しています。

①一定要件で金利引き下げ「セーフティネット貸付」

セーフティネット貸付は、日本政策金融公庫などが実施する融資制度です。社会的・経済的環境の変化などにより一時的に業況が悪化している事業者が、運転資金や設備資金の融資を受けることができます。

貸付限度額・返済期間

項目国民生活事業中小企業事業
貸付限度額7,200万円7億2,000万円
返済期間(運転資金)10年以内10年以内
返済期間(設備資金)20年以内20年以内

主な利用要件

以下のいずれかの要件を満たす必要があります(要件は複数あり、これは一例です)。

  • 最近3か月の売上高が、前年同期または前々年同期に比べて5%以上減少しており、今後も売上減少が見込まれること

数値要件を満たしていない場合でも、一時的に業況が悪化し、資金繰りに著しい支障が生じている、またはそのおそれがある場合には、融資の対象となる可能性があります。

金利優遇の条件

資金繰りに関する要件に該当する事業者が、原材料・エネルギーコストの増加や、取引・生産の減少・停止などの影響を受け、最近の売上高、総利益率(粗利率)または営業利益率が前期に比べて5%以上減少している場合には、一定の条件のもとで金利が優遇されます。

  • 国民生活事業:基準となる金利より低い金利を適用
  • 中小企業事業:基準利率から年0.4%引き下げ

※制度の内容や適用される金利は今後変更される可能性があります。活用をお考えの場合は、早めに日本政策金融公庫へご相談ください。

燃料費高騰に悩む運送業のイメージ

②別枠での借入保証「セーフティネット保証5号」

金融機関から融資を受ける際に、信用保証協会が金融機関に対して中小企業者の債務を保証する仕組みが「信用保証」です。このうち「セーフティネット保証5号」は、業況が悪化している指定業種に属し、売上高減少などの要件を満たす中小企業者を対象としています。

保証枠と保証割合

  • 通常の保証限度額2.8億円とは別枠で、最大2.8億円の保証枠を利用可能
  • 信用保証協会による保証割合は、借入額の80%
  • 対象指定業種には、製造業や運送業など幅広い業種が含まれる
  • 特別小口保証は、従業員20人以下(卸売・小売・サービス業は5人以下)など一定要件を満たす個人事業者等が対象

「既存の保証枠がいっぱいで追加の借入が難しい」という場合でも、別枠の保証を利用できるため、追加融資を検討しやすくなる点が特徴です。

指定業種は583業種に拡大

2026年7月の指定に当たっては、中東情勢の影響を踏まえた臨時の業況調査が行われ、指定業種は520業種から583業種に増加しました。対象となるかどうかは日本標準産業分類の細分類番号により判定されるため、事業内容によっては対象外となる場合もあります。申請前に最新の指定業種一覧をご確認ください。

指定業種は原則として四半期ごとに見直されるため、現在の指定業種に該当する事業者は早めの認定申請をおすすめします(現在の583業種での認定申請締切は9月30日)。

申請の流れ

  1. 市区町村の認定を受ける(申請先は、法人は登記上の住所地または事業実態のある所在地、個人事業主は事業実態のある所在地を管轄する市区町村)
  2. 金融機関と信用保証協会による審査
  3. 承認後、融資実行

全国の「特別相談窓口」でも相談を受け付けています。

セーフティネット保証5号の申請相談イメージ

③「攻め」で乗り切る補助金「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」

借入による資金繰り対策と併せて注目したいのが、新たな事業展開や設備投資を支援する補助金です。「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」は、2026年6月29日に第1回公募が始まりました。

3つの枠と支援対象

本補助金には3種類の枠があり、以下のような取り組みが支援対象となります。

  • 革新的な新製品・新サービスの開発
  • 既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出
  • 海外市場開拓(輸出)に向けた体制強化(グローバル枠)

補助上限額・補助率

項目内容
補助上限額事業枠・従業員規模・賃上げ特例の適用状況に応じて異なり、最大9,000万円(※)
補助率事業枠・事業者規模・特例の適用状況に応じて1/2または2/3

※最大9,000万円となるのは、新事業進出枠またはグローバル枠において従業員が101人以上で、賃上げ特例を適用する場合です。賃上げ特例とは、一定水準以上の賃上げに取り組むことで補助上限額が引き上げられる制度です。

申請にあたっての注意点

この補助金を利用するには、補助事業終了後3〜5年の事業計画において、付加価値額の増加一人当たり給与支給総額の増加事業場内最低賃金など、定められた要件を満たす必要があります。

このうち、賃上げに関する2つの要件を達成できなかった場合には、補助金の一部または全額の返還義務が生じることがあります。これらの要件を踏まえて申請内容が審査され、採否が決定されます。

中東情勢の影響を受けた事業者への評価ポイント

今回の公募では、中東情勢による原油由来製品・資材の供給途絶や高騰、それに伴う事業の中止などの影響を受けた事業者が、今後、市場の成長や生産性の向上が見込まれる分野へ進出する取り組みは、審査項目の一つである「政策面」で評価されます。コスト増を受け身で耐えるだけでなく、事業転換のきっかけとして活用できる制度といえます。

※第1回公募の申請受付期間は9月30日〜10月30日18時です。申請される場合は、公式サイトで最新情報をご確認ください。

新商品開発に取り組む金属加工業のイメージ

よくある質問(FAQ)

Q. セーフティネット貸付とセーフティネット保証5号は、どちらを使えばよいですか?

A. セーフティネット貸付は日本政策金融公庫からの「直接融資」、セーフティネット保証5号は民間金融機関から借りる際に信用保証協会が保証する「保証制度」です。既存の借入枠が埋まっている場合は保証5号の別枠、公庫との直接取引を希望する場合は貸付制度が向いています。どちらも併用を検討できるため、特別相談窓口や金融機関に相談のうえ判断することをおすすめします。

Q. セーフティネット保証5号の指定業種に該当するかはどう確認できますか?

A. 日本標準産業分類の細分類番号により判定されます。指定業種は原則四半期ごとに見直されるため、申請前に中小企業庁の公式サイトで最新の指定業種一覧をご確認ください。

Q. 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金は、いつまでに申請すればよいですか?

A. 第1回公募の申請受付期間は2026年9月30日〜10月30日18:00です。事業計画の策定など準備に時間がかかるため、早めの検討をおすすめします。

Q. 補助金の賃上げ要件を達成できなかった場合、どうなりますか?

A. 付加価値額の増加要件に加え、一人当たり給与支給総額の増加などの賃上げ関連要件を達成できなかった場合、補助金の一部または全額の返還義務が生じることがあります。申請前に事業計画の実現可能性を十分に検討することが重要です。

Q. どの制度が自社に合うか分からない場合はどうすればよいですか?

A. まずは「特別相談窓口」への相談をおすすめします。日本政策金融公庫の各支店、全国の信用保証協会・商工会・商工会議所などで相談を受け付けています。相談の際は、売上の増減が分かる資料を準備しておくとスムーズです。

まとめ

まとめポイント

  • 中東情勢の緊迫化により原油価格が高止まりし、燃料費・原材料費・物流費を通じて中小企業の収益が圧迫されている
  • 資金繰り対策には「セーフティネット貸付」(日本政策金融公庫の直接融資)と「セーフティネット保証5号」(別枠の信用保証、最大2.8億円)の2つが活用できる
  • セーフティネット保証5号の指定業種は2026年7月に520業種から583業種に拡大。現在の指定業種での認定申請締切は9月30日
  • 成長投資には「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」が活用でき、最大9,000万円の補助(第1回申請受付は9月30日〜10月30日18時)
  • 中東情勢の影響を受けた事業者が成長分野へ進出する取り組みは、補助金審査の「政策面」で評価される

影響の内容や置かれた状況により、必要な支援策は異なります。まずは「特別相談窓口」や専門家に相談し、売上の増減が分かる資料を準備したうえで、早めに動き出すことをおすすめします。

中東・ウクライナ情勢・原油価格上昇等に関する特別相談窓口:https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/antei/kokusai_josei/dl/madoguchi.pdf

当方では本サービスをはじめとした公的支援の利用についてもご相談を承っています。お気軽にご相談ください。

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