経営革新計画は、中小企業が新しい事業に取り組んで経営を伸ばすための中期計画です。都道府県の承認を受けると、融資や保証、補助金の審査で使える場面があります。この記事は、要件の数字と申請の入口に絞りました。例外や様式の細部は、各都道府県の公式ページへ案内します。
数字は愛媛県、福岡県、北海道、神奈川県の公式ページと、日本政策金融公庫のページで確認しました。中小企業庁のページはボット対策で自動取得できなかったため、都道府県が掲載する同じ基準を使っています。申請の前に、本社所在地の都道府県の最新ページをご確認ください。
経営革新計画とは
中小企業等経営強化法で、「経営革新」は「事業者が新事業活動を行うことにより、その経営の相当程度の向上を図ること」と定義されています(愛媛県)。計画を作り、国や都道府県に承認してもらう制度です。東京都は、計画書を中期的な経営計画書と説明しています(東京都産業労働局)。この記事は、窓口になることが多い都道府県の承認を中心に書きます。
一般的な事業計画書との違いは、承認を受けた計画は行政の審査を通っていることです。承認を受けると、次の節で書く支援策の入口に立てます。支援策を使えるのは計画期間中です。
経営革新計画の対象者
対象は、業種ごとの従業員基準を満たす会社と個人事業主、および組合等の特定事業者です。愛媛県のページの基準は次のとおりです。常時使用する従業員には、事業主、法人の役員、臨時の従業員を含みません。
| 主たる事業 | 従業員基準(常時使用する従業員の数) |
| 製造業、建設業、運輸業その他の業種(下記以外) | 500人以下 |
| 卸売業 | 400人以下 |
| サービス業(下記以外) | 300人以下 |
| ソフトウェア業、情報処理サービス業、旅館業 | 500人以下 |
| 小売業 | 300人以下 |
直近の営業実績も必要です。東京都は「直近1年以上の営業実績があり、この期間に決算を行っていること(税務署に申告済みのこと)」を挙げています(東京都産業労働局)。福岡県は「直近1年(少なくとも6ヵ月以上)の事業実績があり、この期間に決算(税務申告)を行っていること」としており、都道府県で書き方が違います(福岡県)。創業前や創業間もない会社は対象外です。組合の扱いも、都道府県のページで確認してください。
承認の要件:新事業活動と数値目標
新事業活動に取り組むこと
新事業活動は、次の6つの取り組みを指します(愛媛県)。
- 新商品の開発又は生産
- 新役務の開発又は提供
- 商品の新たな生産又は販売方式の導入
- 役務の新たな提供方式の導入
- 技術に関する研究開発及びその成果の利用
- その他の新たな事業活動
世界初である必要はありません。自社にとって新しい取り組みであれば、他社が使っている技術や方式でも原則として対象になります。ただし、同業他社ですでに相当程度普及している技術や方式の導入は対象外です。単なる製造ラインの追加、老朽設備の更新、営業所の増設、取扱品目の追加は、既存事業の増強にあたり、新たな取り組みに該当しません(福岡県)。
付加価値額と給与支給総額の目標伸び率
「経営の相当程度の向上」として、2つの指標が事業期間に応じた目標伸び率を達成する計画を立てます。承認には両方を満たす必要があります(北海道、福岡県)。
| 事業期間 | 付加価値額(または1人当たり付加価値額)の伸び率 | 給与支給総額の伸び率 |
| 3年 | 9%以上 | 4.5%以上 |
| 4年 | 12%以上 | 6%以上 |
| 5年 | 15%以上 | 7.5%以上 |
- 付加価値額は、営業利益+人件費+減価償却費です。1人当たりは、これを従業員数で割ります。
- 給与支給総額は、役員や従業員に支払う給料、賃金、賞与と、給与所得とされる各種手当(残業手当、家族手当、住宅手当など)です。退職手当など給与所得とされないものや、法定福利費、福利厚生費は含みません(愛媛県。個人事業主の計算も同ページにあります)。
- 目標伸び率は、事業期間の終了時に達成する数字です。期間の途中の伸び率は問われません(福岡県)。
伸び率のほかに、計画終了時点の数字にも条件があります。北海道は、付加価値額(または1人当たりの付加価値額)が計画終了時点で正であることを求めています(北海道)。神奈川県は、計画終了年度に付加価値額と給与支給総額がそれぞれ正の値であり、経常利益が黒字であることを求めています(神奈川県)。県ごとの上乗せがありうるため、申請先の基準を確認してください。
計画期間は、北海道のページによると3年から8年です。研究開発の期間がある場合は、研究開発期間と事業期間を合わせて最大8年になり、事業期間は3年、4年、5年のいずれかです(神奈川県)。
承認のメリット
神奈川県は、知事の承認を支援メニューを利用するための前提条件とし、支援メニューの実行までは保証しないとしています。東京都も、承認とは別に、支援策の実施機関への申込みと審査が必要と明記しています。支援策ごとの対象者は、各機関の条件で決まります。
信用保証の特例
承認を受けた経営革新計画を行うための資金について、通常の保証限度額とは別に、同額の別枠が設けられます。研究開発費用を対象とする新事業開拓保証は、限度額が通常の2億円から3億円に引き上げられます(神奈川県のページ)。
日本政策金融公庫の融資
日本公庫の国民生活事業には「新事業活動促進資金」があり、「経営革新計画」の承認を受けた方が対象に含まれます。融資限度額は7,200万円、利率は特別利率B(土地にかかる資金は基準利率)です(日本政策金融公庫)。中小企業事業の融資条件は、公庫のページから別に確認してください。
同じ資金の対象には、経営力向上計画の認定を受けた方も並んでいます。そちらの設備投資の税制は経営力向上計画B類型の記事にまとめています。
国の補助金の加点
神奈川県は、国の補助金や施策では承認企業に対して加点や加算を行っているものもある、と案内しています(神奈川県のページ)。どの補助金で加点されるかは、公募ごとの要領で変わります。申請を考えている補助金の公募要領で確認してください。
申請の流れ
申請先は、法人は登記上の本店所在地、個人事業主は住民登録のある都道府県です(福岡県は、納税地が県内であることも示しています)。営業所が別の県にあっても、本店所在地の県が窓口になります。様式や受付方法は都道府県ごとに違います。
一例として東京都を挙げます。東京都は次の運用です(東京都産業労働局)。
- 申請書を作成してから電話予約をし、書類を提出します。申請方法は紙申請と電子申請があります。
- 提出書類は東京都の指定様式です。中小企業庁や他県の様式では受け付けられません。
- 毎月の審査会で書類審査を行い、結果は郵送で通知されます。申請から結果まで数か月かかります。
- 当月の受付終了日は毎月15日(土日祝日の場合は前営業日)です。受付状況によっては、締切日前に受付が終わることがあります。
- 電話予約と提出は、申請する事業者ご自身が行います。
提出書類の詳細は東京都の手続きページにあります。他の都道府県は、本社所在地の都道府県のページを探してください。
つまずきやすい点
- 新規性の説明が弱い。既存事業との違い(対象顧客、提供方法、販路など)と、同業で普及していない根拠を示します。
- 既存事業の拡大にとどまる。単なる設備の更新や取扱品目の追加は既存事業の増強にあたり、新事業活動に該当しません。
- 数値目標が計画と結びつかない。付加価値額と給与支給総額の伸び率を、事業の中身から積み上げて説明します。
- 補助金の締切から逆算していない。東京都のように審査まで数か月かかるうえ、補助金の都合で審査の日程や基準は変わりません(東京都)。
- 他県や中小企業庁の様式で作ってしまう。申請先の都道府県の様式を使います。
よくある質問
承認を受ければ、必ず融資や補助金を受けられますか?
保証されません。承認は支援策を使うための前提で、融資や保証は金融機関や保証協会、公庫の審査があります。補助金の加点も、公募要領の定めによります。
営業所が複数の都道府県にあるときは、どこへ申請しますか?
法人は登記上の本店所在地、個人事業主は住民登録のある都道府県です。福岡県は、個人事業主の納税地が県内であることも示しています(福岡県)。
コンサルタントに頼んでも、書類は自分で出しますか?
東京都は、認定支援機関の支援を受けている場合でも、申請書の提出は原則として事業者自身が行い、申請者に直接確認することがあると案内しています(東京都産業労働局)。計画の中身を自分の言葉で説明できる状態にしておく必要があります。
申請の相談
松嶋は、新事業の整理、数値目標の組み立て、計画書の記載、補助金の申請とのスケジュール合わせを一緒に進めます。承認の判断は都道府県が行うため、承認をお約束することはできません。
ご相談は補助金申請の相談ページと経営支援サービスのページから受け付けています。補助金は補助金データベースでも探せます。
経営革新計画作成支援サービス

上記のようなポイントを押さえた経営革新計画の作成には、しっかりとした計画を立てる必要があり、相当の時間がかかります。サポート致しますので、以下のフォームから是非ご相談ください!
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