今回は、令和6年度補正予算案が衆議院を通過した段階(2024年12月中旬)で公表されている情報をもとに、特に設備投資やデジタル投資をお考えの事業者が利用できる補助金の概要・展望について解説します。
はじめに
2024年12月に令和6年度補正予算が国会で可決されるとともに令和7年度本予算の政府案が可決されました。
中小企業庁の両予算における「中小企業対策予算」は、ホームページでも最新状況を確認することができます。
こちらでは「令和6年度補正予算のポイント」に基づき、重点政策・予算の概要の確認いただくとともに、2025年度に設備投資やデジタル投資をお考えの事業者が利用できる補助金の概要・展望について解説します。
https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/yosan/r7/r6_hosei_point.pdf
本解説は、2025年度に事業者がどの補助金を利用できるかを検討するための情報を早期に提供することを目的とします。
令和6年度補正予算のポイントでは、補助金に関連する政策として「持続的な賃上げを実現するための生産性向上・省力化・成長支援」が掲げられています。具体的には、以下の項目が挙げられており、各施策に紐づいて補助金が公募されることとなります。
- 生産性向上支援の拡充
- 新事業への進出にかかる支援の推進
- 成長支援の新設・強化
- 省力化投資支援の運用改善
次項以降では、それぞれの項目の具体的な予算規模などにつき解説いたします。
尚、補助金の具体的な内容については、今後公表される補助金事務局の公式サイトおよび公募要領を確認する必要があります。
生産性向上支援の拡充
◎予算規模:3,400億円(生産性革命推進事業)中の約2,400億円程度
2025年度も中小企業・小規模事業者の生産性向上を支援するため、ものづくり補助金など4つの補助金の実施が見込まれています。
ここでは、それぞれの補助金について①概要、②前年度からの見直し点、③設備投資・デジタル投資への対応、について概説します。
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(ものづくり補助金)
https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/yosan/r7/r6_mono.pdf
中小・小規模事業者向け生産性向上支援の主たる補助金として、「ものづくり補助金」が引き続き実施される予定です。
昨年度と同様に、「製品・サービス高付加価値枠」および「グローバル枠」が設定され、製品・サービス高付加価値枠の中でDX・GX推進等、重要政策課題に関する類型が設けられることが見込まれます。
一方、従来の「省力化(オーダーメイド)枠」は、後述する「省力化投資補助金」に移管される予定です。
①概要 ※補助上限額・補助率は予定・見込み | 中小企業・小規模事業者等が取り組む革新的な製品・サービスの開発、生産性向上のための設備投資等を支援 補助上限額:従業員数に応じて750万~3,000万円、最大4,000万円 補助率:2分の1~3分の2 |
②前年度からの見直し | ・従業員数21人以上の中小企業の補助上限額引き上げ ・収益納付の廃止 ・賃上げ要件や制度運用の見直し |
③設備投資・デジタル投資への対応 | 生産性向上に関わる高額の設備投資が対象となり、DX枠として補助上限額引き上げ・補助率アップが見込まれる |
IT導入補助金
https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/yosan/r7/r6_it.pdf
中小企業・小規模事業者のIT導入・DXによる生産性向上を幅広く支援するため、2025年度もIT導入補助金が実施される予定です。
①概要 ※補助上限額・補助率は予定・見込み | 中小企業・小規模事業者の業務効率化やDXの推進、セキュリティ対策に向けたITツール等の導入を支援 補助上限額:枠・類型に応じて 5万~450万円 補助率:2分の1~5分の4 |
②前年度からの見直し | ・セキュリティ枠の補助上限額引き上げや要件見直し ・汎用ツールや導入後の活用支援の補助対象化 |
③設備投資・デジタル投資への対応 | 導入支援事業者が登録した汎用ITツールが対象となり、通常枠は改善する業務プロセス数に応じて補助金額が決定される |
小規模持続化補助金
https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/yosan/r7/r6_jizoku_summary.pdf
小規模持続化補助金は、長年実施され定着している「小規模事業者の販路開拓」を主目的とする補助金であり、2025年度も実施される予定です。
①概要 ※補助上限額・補助率は予定・見込み | 小規模事業者による経営計画に基づく販路開拓やPR等を支援 補助上限額:通常枠50万円(枠により最大200万円) 補助率:3分の2~4分の3 |
②前年度からの見直し | ・経営計画の策定を重視し、制度を簡素化 (通常枠や創業枠の再編等) |
③設備投資・デジタル投資への対応 | 業務効率化(生産性向上)支援として設備投資・DX投資も対象となり、ウエブサイト関連は一定比率内で認められる |
事業承継・M&A補助金
https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/yosan/r7/r6_m_and_a.pdf
2025年までに70歳を超える中小企業経営者は245万人となり、そのうち半数が後継者未定と言われる状況の中、事業承継・M&A支援を目的とする本補助金は継続実施される予定です。
①概要 ※補助上限額・補助率は予定・想定値 | 5年以内に事業承継を予定する場合の設備投資を補助する事業承継促進枠に加え、専門家活用・M&A後の経営統合(PMI)の費用なども対象 補助上限額(※):800万~1,000万円 補助率(※):2分の1~3分の2 ※事業承継促進枠 |
②前年度からの見直し | ・早期承継促進のための枠再編・PMIを後押しするためのPMI推進枠創設 ・M&Aのトラブル防止に必要な費用を支援拡充 ・売上高100億円を目指す企業の支援強化のための補助上限額引き上げ |
③設備投資・デジタル投資への対応 | 事業承継に伴う事業高度化に向けた設備投資や情報化投資が、対象経費として認められる |
新事業の進出にかかる支援の推進
◎新事業進出促進補助金の新設
https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/yosan/r7/shinjigyo_shinsyutsu_summary.pdf
予算規模:1,500億円規模(中小企業省力化投資補助事業を再編)
事業再構築補助金の後継となる補助金として「新事業進出促進補助金」が新設される予定です。中小企業や小規模事業者の新たな事業への挑戦に対し、建物や機械設備の導入、システム構築、技術導入、専門家への相談などに生じる費用を支援するものです。
補助金の支援を受けるには、成長拡大に向けた新規事業への挑戦や賃金要件などが求められる見込みです。
成長支援の新設・強化
◎中小企業成長加速化補助金(新設)
https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/yosan/r7/seicho_kasokuka.pdf
予算規模:3,400億円(生産革命推進事業)中の約1,000億円程度
中堅企業層の拡大に向け、売上高100億円超の中小企業等を創出するため設備投資や経営課題(M&A・海外展開・人材育成など)への取り組みを支援する補助金が創設されます。
建物費、機械装置費、ソフトウェア費、外注費、専門家経費などが対象経費になると見込まれています。
省力化投資支援の運用改善
◎省力化投資補助金の継続と見直し
https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/yosan/r7/shoryokuka.pdf
予算規模:3,000億円(中小企業等事業再構築促進基金を活用。令和6年に再編)
中小企業が効率的な生産や業務の省力化を進められるよう2024年から開始した「省力化投資補助金」の仕組みが整備されます。
「カタログ注文型」は従来タイプの継続であり、「カタログ」に掲載された汎用製品を事業者が選択し補助対象とすることで、簡易で即効性がある省力化投資を促進するものです。
「一般型」は、ものづくり補助金の「オーダーメイド枠」から移行・新設され、業務プロセスの自動化・高度化や、ロボット生産プロセスの改善・DXなど、事業者個別の省力化投資を促進するものです。
【カタログ注文型】
補助上限額:従業員数に応じて200万~1,000万円
補助率:2分の1
【一般型】
補助上限額:従業員数に応じて750万~8,000万円
補助率:2分の1~3分の2
まとめ
ここで解説したように、令和6年度補正予算・令和7年度本予算では中小企業の成長を支援するため、様々な補助金の制度が用意されています。
2025年度に設備投資等を検討している事業者には、こうした設備投資に利用できる補助金がないかを確認することをお勧めします。
但し、補助金制度の確定から公募開始までの期間が短いため、事業者が独自に補助金の申請を行うのは骨が折れるかもしれません。
そのため、コンサルタントのサポートを受けることも1つの方法です。
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