人手不足を解消するための設備投資を後押しする国の補助金が、中小企業省力化投資補助金(以下、省力化投資補助金)です。「カタログ注文型」と「一般型」の2つの類型があり、どちらを選ぶかで、準備する書類の量も受け取れる金額も大きく変わります。
この記事では、2026年10月時点の公式情報をもとに、2つの類型の違い、補助額、要件、公募スケジュール、つまずきやすい点を1本にまとめました。一般型の要件を細かく見たい方は、省力化投資補助金(一般型)徹底解説もあわせてご覧ください。
省力化投資補助金とは
省力化投資補助金は、人手不足に悩む中小企業等の省力化投資を支援する補助金です。中小企業等の付加価値額や生産性の向上を図り、賃上げにつなげることを目的としています。制度の概要は、補助金活用ナビ(中小機構)と省力化投資補助金の公式ポータルで公開されています。
申請は電子申請のみです。GビズIDプライムアカウントが必要で、取得に時間がかかる場合があるため、検討を始めた段階で手続きを進めておくと安心です。
省力化投資補助金の2つの類型を比較
公式ポータルでは、カタログ注文型を「簡易で即効性がある省力化投資」、一般型を「オーダーメイド性のある多様な省力化投資」と位置づけています。主な違いは次のとおりです。
| 項目 | カタログ注文型 | 一般型 |
|---|---|---|
| 投資の内容 | カタログに掲載された省力化効果のある汎用製品を選んで導入 | 個別の現場や事業内容に合わせた設備導入・システム構築 |
| 補助上限額 | 最大1,500万円(賃上げ特例を使う場合) | 最大1億円(大幅賃上げ特例を使う場合) |
| 補助率 | 1/2以下 | 中小企業は1/2(最低賃金引き上げ特例の場合は2/3)、小規模企業者・小規模事業者と再生事業者は2/3 |
| 申請のしかた | 中小企業等が販売事業者と共同で交付申請 | 事業者が事業計画書を作成して応募申請し、採択後に交付申請 |
| 公募 | 随時受付(2027年3月末頃まで) | 公募回制(第8回は2026年10月16日17:00締切) |
| 審査 | 中小機構が審査し、採択と同時に交付決定 | 外部有識者の審査委員会が事業計画書を評価 |
| 補助事業の期間 | 交付決定日から原則12か月以内 | 交付決定日から17か月以内(採択発表日から19か月以内) |
どちらを選ぶか迷う場合は、先にカタログを確認してください。一般型の公募要領にも、検討前に製品カタログを必ず確認するよう書かれています。カタログに載っている製品は国が省力化効果を認めたもので、カタログ注文型のほうが申請は迅速かつ簡易です。導入したい設備がカタログに無い、または現場に合わせた設計や複数設備の組み合わせが必要な場合に、一般型を検討する流れが自然です。出典は一般型 第8回公募要領です。
カタログ注文型の省力化投資補助金
補助上限額と補助率
2026年3月19日の制度改定後の上限額は、従業員数ごとに次のとおりです。カッコ内は大幅な賃上げを行う場合の額で、補助率は1/2以下です。上限額は交付申請時点の従業員数で決まります。
| 従業員数 | 補助上限額(大幅な賃上げを行う場合) |
|---|---|
| 5人以下 | 500万円(750万円) |
| 6〜20人 | 750万円(1,000万円) |
| 21人以上 | 1,000万円(1,500万円) |
カッコ内の額が使える「大幅な賃上げ」は、申請時と比べて、事業場内最低賃金を3.0%以上、給与支給総額を6%以上増やす計画を、補助事業実施期間の終了時点で達成することです。申請時に賃金引き上げ計画を従業員へ表明しておく必要があります。自己の責によらない正当な理由なく目標を達成できなかった場合、補助額は減額されます。補助額が25万円未満になる申請はできません(借用、つまり賃貸借契約の経費を対象とする場合は例外です。ファイナンス・リース取引は借用に含まれません)。出典はカタログ注文型 公募要領です。
対象になる製品と申請の流れ
補助の対象は、カタログに登録された製品です。公式ページの例では、券売機・自動精算機・自動チェックイン機といった店舗・施設向けの機器や、スチームコンベクションオーブン・自動フライヤーなどの厨房機器が挙げられています。製造業向けの機械や測量用ドローンなども追加が続いており、製品カタログで製品カテゴリと販売事業者を検索できます。
- カタログから導入したい製品を選ぶ
- その製品を扱う販売事業者に連絡する
- 販売事業者と共同で交付申請をする
- 審査を経て交付決定を受ける
- 販売事業者と共同で製品を導入する
- 補助事業の完了後に実績報告をし、補助金が振り込まれる
流れの出典は補助金活用ナビです。カタログ注文型は、採択と同時に交付決定が行われます。
主な要件
- 人手不足の状態にあることを示します。たとえば、直近の従業員の平均残業時間が30時間を超えている場合などが、公募要領の選択肢に挙がっています。
- 補助事業の終了後3年間、毎年、申請時と比べて労働生産性を年平均成長率3.0%以上向上させる事業計画を立てます(2回目以降の交付申請では4.0%以上)。
- 補助事業の終了後も、効果報告を3年間行います。
2回目以降の交付申請は、それ以前の交付申請にかかる補助金の支払いが完了した後にできます。累計の上限額は、その時点で定まる補助上限額の2倍で、前回までの累計交付額を差し引いた額が残りの枠です。1回の申請額は、その時点の補助上限額を超えられません。あわせて、前回の補助事業で省力化効果が得られていることや、事業場内最低賃金を前回の交付申請時点から引き上げていることなどの要件が加わります。引き上げ幅は、前回の交付申請から2年未満なら3.5%以上で、2年以上たつと1年ごとに3.5%以上が上乗せされます(2年以上で7.0%以上、3年以上で10.5%以上)。詳しくは2026年3月19日制度改定のページを確認してください。
一般型の省力化投資補助金(第8回公募)
補助上限額と補助率
| 従業員数 | 補助上限額(大幅賃上げ特例の適用時) |
|---|---|
| 5人以下 | 750万円(1,000万円) |
| 6〜20人 | 1,500万円(2,000万円) |
| 21〜50人 | 3,000万円(4,000万円) |
| 51〜100人 | 5,000万円(6,500万円) |
| 101人以上 | 8,000万円(1億円) |
補助率は、中小企業が1/2、小規模企業者・小規模事業者と再生事業者が2/3です。最低賃金引き上げ特例の対象になる中小企業は2/3に上がります。収益納付は求められません。特例の条件や再生事業者の定義は、第8回公募要領で確認してください。
対象になる事業と基本要件
対象は、デジタル技術等を活用した専用設備(オーダーメイド設備)を導入して、省力化を図る事業です。汎用設備でも、導入環境に応じて周辺機器や機能が変わる場合や、複数の汎用設備を組み合わせて高い省力化効果を出す場合は、オーダーメイド設備とみなされます。汎用設備を単体で導入するだけの事業は対象外です。補助対象経費には、単価50万円(税抜)以上の機械装置・システム構築費を必ず含めます。
事業計画は3〜5年で作成し、次の基本要件を満たす必要があります。最低賃金引き上げ特例の適用事業者は、最低賃金に30円を加える要件が外れ、基本要件は最初の2つと最後の1つになります。
- 労働生産性を年平均成長率で4.0%以上向上させる
- 1人当たり給与支給総額を年平均成長率で3.5%以上増加させる
- 事業場内最低賃金を、事業計画期間中は毎年、事業実施都道府県の最低賃金に30円を加えた水準以上にする
- 従業員が21名以上の場合は、交付申請時までに、次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を「両立支援のひろば」で公表する
このほか、業務量の削減割合を示す省力化指数の算出と、投資回収期間の提出が求められます。1人当たり給与支給総額の目標を達成できなかった場合は、達成率に応じて補助金の返還を求められます。事業場内最低賃金の要件を満たせない場合も、返還の対象になります。ただし、再生事業者は基本要件未達の場合の返還が免除されます。このほか、天災など事業者の責めに帰さない理由がある場合などに、返還を求められないことがあります。免除の条件は公募要領の1-6で確認してください。
審査の加点
審査では、取り組みに応じた加点があります。公募要領に載っている加点項目には、事業継続力強化計画の認定、えるぼし認定、くるみん認定、健康経営優良法人2026の認定などがあります。成長加速マッチングサービスに会員登録し、応募締切日時点で挑戦課題を登録している事業者も、加点の対象です。
オーダーメイド要件への対応パターンや採択事例は、一般型の徹底解説で詳しく解説しています。
省力化投資補助金のスケジュール
カタログ注文型は、2027年3月末頃まで随時申請を受け付けています。一般型は公募回制で、年3〜4回の公募が予定されています。公式のスケジュールページによると、直近の回は次のとおりです。
| 公募回 | 申請受付開始 | 公募締切 | 採択発表 |
|---|---|---|---|
| 第7回 | 2026年7月1日 | 2026年7月31日17:00 | 2026年11月中旬(予定) |
| 第8回 | 2026年9月18日 | 2026年10月16日17:00 | 2027年2月上旬(予定) |
第9回のスケジュールは、確定次第の公開とされています。また、一般型は、応募申請中・交付申請中の事業者や、交付決定後に事務局からの補助金支払が完了していない事業者は申請できません。次の公募回を狙う場合は、前の回の手続きの状況も確認してください。
2026年10月19日(月)10:00〜18:00頃は、システムメンテナンスのため、申請マイページがすべての機能で使えなくなる予定です。カタログ注文型では、販売事業者ポータルと製造事業者ポータルも停止します。この日に手続きを予定している方は、日程をずらしてください。第8回公募では、令和8年熊本地震の被害を受けた熊本県内の事業者は、審査で配慮されます。
省力化投資補助金の申請の流れ
一般型の流れは、次のとおりです。カタログ注文型は、前の章で紹介した流れになります。
- GビズIDプライムアカウントを取得する
- 事業計画を策定し、必要書類を準備して応募申請をする
- 審査を経て補助金交付候補者として採択される
- 業者選定や相見積もりを行い、交付申請をする
- 交付決定後に設備を発注し、補助事業を始める
- 補助事業の完了後に実績報告をし、補助金が振り込まれる
提出書類や様式は、資料ダウンロード(一般型)にまとまっています。
省力化投資補助金でつまずきやすい点
- 交付決定前の発注や契約は、補助対象になりません。見積りを取る段階と、発注する段階を分けて進めてください。
- 一般型では、汎用設備を単体で導入するだけの事業は対象外です。その場合は、カタログ注文型で申請できないかを先に確認します。
- 賃上げの目標を達成できないと、カタログ注文型は補助額の減額、一般型は補助金の返還につながります。無理のない計画にしてください。
- 事業計画は申請者自身が作成する決まりです。公募要領は、実際の作業にかかる費用とかけ離れた高額な成功報酬を請求する業者に注意するよう呼びかけています。作成の支援を受けた場合は、支援者名と報酬の内容を申請画面に記載します。
- 国の他の補助金と補助対象経費が重複する事業は、対象になりません。
- 都道府県によっては、採択された事業者に上乗せ補助を行っています。補助金活用ナビに、熊本県、大分県、高知県の例が載っています。お住まいの地域の制度も確認しておくと、自己負担を減らせる場合があります。
省力化投資補助金のこれまでの変更点
省力化投資補助金は、公募を重ねながら制度が見直されてきました。主な変更は次のとおりです。
- 2025年1月30日に、一般型の第1回公募が始まりました。以降、公募回ごとに受付期間と採択発表日が設定されています。
- 2026年3月19日に、カタログ注文型が改定されました。受付期間は2026年9月末頃から2027年3月末頃までに延び、収益納付が撤廃されました。
- 同じ改定で、大幅な賃上げの基準は、事業場内最低賃金を45円以上増やすことから、3.0%以上増やすことに変わりました。
- 同じ改定で、補助上限額は、従業員5人以下が200万円から500万円に、6〜20人が500万円から750万円に引き上げられました。
- 同じ改定で、2回目以降の交付申請の累計補助上限額が、その時点の補助上限額の2倍に見直されました。
金額や要件は公募回や改定時期で変わります。申請する回の公募要領で、必ず最新の内容を確認してください。
省力化投資補助金のQ&A
カタログ注文型と一般型は、どう使い分けますか
導入したい設備がカタログに載っているなら、カタログ注文型が手間の少ない選択肢です。載っていない設備や、現場に合わせて設計するシステム、複数の設備を組み合わせる投資は、一般型で検討します。一般型は事業計画書の作成と審査があるため、準備の期間も見込んでください。
賃上げは必須ですか
一般型は、1人当たり給与支給総額を年平均3.5%以上増やす計画が基本要件に入っています。カタログ注文型は、補助上限額のカッコ内の額を使う場合に、賃上げの目標が求められます。2回目以降の申請では、前回の交付申請時点より事業場内最低賃金を3.5%以上上げていることも要件になります(前回の交付申請から2年以上たつと、必要な引き上げ幅は大きくなります)。
自分で申請できますか
応募申請は、申請者自身が電子申請システムで行います。交付申請に限り、代理申請を行うための委任関係を管理する機能があります。事業計画は申請者自身で作成します。作成の支援を外部から受けた場合は、支援者名と報酬の内容を申請画面に記載します。カタログ注文型は、販売事業者が申請と手続きをサポートします。
省力化投資補助金の申請相談
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