経営の世界では、常に進化し続けることが成功への鍵です。
そのために設備投資を行い、経営力を高めることが不可欠です。
経営者が持つ目標として、業務の効率化と将来の競争力強化があります。
設備投資はこれらの目標を達成する重要な手段であり、企業の成長には欠かせません。
今回は、設備投資の際に法人税削減などさまざまなメリットを受けられる『経営力向上計画』をご紹介します。
経営力向上計画とは
自社の生産性向上を目指す事業計画を国の役所に提出し、認定を受けることで、税制面・金融面でさまざまなメリットを得られる経済産業省の制度です。
適切な計画書を作成し、提出書類に不備がなければ100%認定されます。
製造業をはじめ建設業・小売業など幅広い業種で利用でき、以下の要件を満たす、全国の事業者が対象となります。
法人形態等 | ・会社または個人事業主・社会福祉法人・特定非営利活動法人・企業組合・協業組合・事業協同組合等 |
従業員数 | 2,000人以下 |
経営力向上計画のメリット
経営力向上計画の認定により受けられるメリットのうち、今回は「法人税削減」「補助金との併用」「先端設備等導入計画との併用」について紹介します。
法人税削減
内容
経営力向上計画に基づき一定の設備を取得すると、法人税について「即時償却」または「取得価格の10%の税額控除(※)」のいずれかの優遇措置を受けられます。
※税額控除は、当期法人税の20%までとなります。
また、資本金3,000万円超1億円以下の法人は、税額控除が取得価格の7%となります。
例えば3,000万円の設備を取得した場合、以下のいずれかを選択できます。
・全額を償却費に計上し(即時償却)、法人税額算出のもとになる
税引前当期利益を減らして、法人税の削減効果を得る
・取得価格の10%にあたる300万円の税額控除を受ける
ただし、税額控除は当期法人税の20%までとなり、300万円のうち控除できなかった分は翌期に繰り越し利用できる
対象となる設備
法人税削減の優遇措置を受けるためには、一定価格以上の設備を取得する必要があります。
・機械装置(160万円以上)
・ソフトウェア(70万円以上)
・器具備品・工具(30万円以上)
・建物付属設備(60万円以上)
申請類型
申請類型は4つに分かれており、それぞれ異なる要件があります。
【A類型:生産性向上設備】
以下の①、②を満たす設備
①一定期間内に販売されたモデル(最新モデルの必要はありません)
②経営力向上に資する指標(生産効率、エネルギー効率、精度など)が旧モデルと比較して年平均1%以上向上する
【B類型:収益力強化設備】
年平均の投資利益率を5%以上にするために必要な設備
【C類型:デジタル化設備】
事業プロセスの①遠隔操作、②可視化、③自動制御化のいずれかを可能にする設備
【D類型:経営資源集約化設備】
経営力向上計画に従って事業承継などを行った後に取得・製作・建設する設備
申請手続き
法人税削減の優遇措置を受けるためには、以下の手続きが必要です。
①工業会などの証明書(A類型)や経済産業局の確認書(B~D類型)を取得します。
②当該設備を利用し生産性を上げるための「経営力向上計画」を作成し、国の役所から認定を受けます。
③原則、認定を受けた後に設備を取得します。
例外として、設備を取得した後などに経営力向上計画を申請する場合は、取得日から60日以内に本計画を提出して受理されることが要件です。
補助金との併用
経営力向上計画は、補助金・助成金と併用する際にメリットが高まります。
東京都の最大1億円の設備投資系助成金を例に説明いたします。
例えば、1億5000万円の設備を取得する際にこの助成金に申請し、1億円の助成金を受け取ったとします(助成率3分の2)。
法人税の実効税率が23.2%とすると、2,320万円の法人税が課されてしまいます。
一方、経営力向上計画の即時償却を利用すれば、取得価格1億5000万円全額を、取得した事業年度に費用計上できます。
その結果、1億円の助成金収入は相殺され、残り5000万円は当期一括で、もしくは翌期と2期に分けて費用計上できます。
このように、補助金・助成金の受給による法人税増大の負担を減らす効果があります。
先端設備等導入計画との併用
取得した設備には固定資産税が課されますが、設備投資を通じて労働生産性の向上を図る「先端設備等導入計画」を作成・提出し、市区町村から認定を受けることで、固定資産税の減免を受けられます。
先端設備等導入計画は、経営力向上計画の税額控除はもとより即時償却とも併用可能です。
先端設備等導入計画の認定による固定資産税(地方税)の減免と経営力向上計画の認定による法人税(国税)の削減の両方のメリットを得ることができます。
まとめ
経営力向上計画は補助金と違って、適切な計画書を作成し、書類を不備なく添付すれば、ほぼ100%認定されます。事業者にとって特にデメリットはありませんので、積極的な活用をお薦めします。
設備取得を検討中の方は、この機会にぜひご検討ください。
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