いよいよインボイス制度の施行まで2ヶ月を切りました。
皆さま、準備は万全でしょうか?
改めてインボイス制度において見落としがちなポイントをチェックしていきましょう。
インボイス制度の概要
インボイス制度とは、適格請求書等保存方式のことです。
インボイスと呼ばれる一定の記載事項を満たす適格請求書を交付して保存することが求められます。
買手(発注者)は売手(受注者)からインボイスを受領・保存することで売上の消費税額から仕入れの消費税額を差し引くことができます(仕入税額控除)。
インボイスを交付できるのは、税務署長から登録を受けた「適格請求書発行事業者」に限られます。
登録できるのは消費税を納める義務のある課税事業者のみなので、免税事業者のままではインボイスを交付できません。
インボイス対応で見落としがちなチェックポイント
最初に、買手(インボイスを受領する発注者)が見落としがちなチェックポイントを3つ紹介します。
チェック① 値引き時の処理について運用を決めたか
売手(受注者)からリベート等で値引きを受ける場合には、売手から値引き分の請求書を入手する必要があります。
入手困難な場合、値引き分の請求書を買手が代わりに作成できます。
値引き時の処理について、運用ルールを決めておきましょう。
チェック② 立替払いの領収書の記載内容について
経費を立替払いする際のレシートや領収書についても、インボイス制度の記載要件を満たす必要があります。
要件を満たしていないと、仕入税額控除が受けられなくなります。
従業員が領収書等の記載内容を理解できるよう教育しましょう。
また、従業員の名前が記載された領収書等を会社の経費にするには、会社名を記載した立替金精算書を作成し、従業員名の領収書と併せて保存する必要がありますので、ひな形を事前に準備しましょう。
チェック③ 立替払いの電子取引データを収集できるか
従業員が経費を立て替えた際の領収書(宛名が会社名のもの)等がECサイトやメールで入手した電子データの場合、その電子データを従業員から収集して、保存する必要があります。
電子データの収集について、社内ルールを決めておきましょう。
次に、売手(インボイスを発行する受注者)が見落としがちなチェックポイントを3つ紹介します。
チェック④ 消費税額を請求書単位で計算しているか
インボイス制度では、消費税の端数処理ルールが定められました。
1つのインボイスの中で、税率が異なる商品グループごとに合計額を算出し、その上で8%または10%の消費税額を計算します。
その際に1円未満の端数が生じた場合は、端数処理を行います。
Excel等の請求書は、上記をもとに計算式を見直しましょう。
チェック⑤ 納品書と請求書のどちらをインボイスとするか決めたか
消費税を記載した納品書を買手(取引先)へ渡している場合には、取引先との間で、納品書と請求書のどちらをインボイスとして取り扱うかを決めておく必要があります。
納品書をインボイスとする場合、月次で交付する合算請求書には、各納品書の消費税額を合算した金額を表示します。
チェック⑥ インボイスの保存ルールを決めているか
交付したインボイスのコピーは7年間保存する必要があります。
電子的な方法(メール等)でインボイスを交付した場合、消費税法では紙に出力しての保存が認められていますが、所得税法・法人税法では、電子データのまま保存する必要があります。
実務上、電子データを保存できるよう準備しましょう。
インボイス制度に関する公的支援
ここまではインボイス制度に関するチェックポイントを説明しました。
後半は、インボイス制度の準備にも利用できる公的支援を紹介します。
IT導入補助金
業務の効率化やDXの推進、セキュリティ対策のためのITツール等を購入する場合に、利用できる補助金です。
今回は、インボイス制度対応に利用できる2つの類型をご紹介します。
①デジタル化基盤導入類型
会計ソフト・受発注ソフト・決済ソフト・ECソフトの購入費用と、それらを機能させるハードウェアの購入費用の補助を受けられます。
②商流一括インボイス対応類型
受発注ソフトを導入し、仕入先や外注先の中小企業等に無償でアカウントを供与して利用させる場合、そのクラウド利用料について補助を受けられます。
類型 | デジタル化基盤導入類型 | 商流一括インボイス対応類型 | |
対象経費 | ソフトウェア購入費 | ハードウェア購入費 | クラウド利用料(最大2年分) |
補助上限額 | 350万円 | 30万円(PC・タブレット等 10万円、レジ・券売機等20万円) | 350万円 |
補助率 | 補助額50万円以下部分 4分の3(※1)補助額50万円超~350万円以下部分 3分の2(※2) | 2分の1 | 2分の1 |
次回締切 | 2023年8月28日 | 2023年10月2日 |
※1 導入するITツールが会計・受発注・決済・ECの機能を1機能以上有する場合
※2 導入するITツールが会計・受発注・決済・ECの機能を2機能以上有する場合
なお、上記2つの類型とは別の「通常枠」では、「会計・財務・経営」プロセスの生産性を向上するITツールの導入経費が補助されます。さらに、ITツールがインボイス制度対応の場合は、加点対象となります。
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者が自社の経営を見直し、持続的な経営に向けた経営計画を作成した上で、販路開拓や生産性向上に取り組む場合に、補助金を受けられる制度です。
免税事業者が補助事業終了までに適格請求書発行事業者に転換すると、補助上限額が一律50万円上乗せされます(インボイス特例)。
以下のページで、小規模事業者持続化補助金に関する情報を提供しておりますので是非合わせてご参照ください。
東京都 中小企業デジタルツール導入促進支援事業
東京都内の中小企業者等が、業務効率化のためのデジタルツールを導入する場合、東京都から助成金を受けられます。
助成限度額 | 100万円 |
助成率 | 2分の1 (小規模事業者は3分の2) |
対象経費 | ◎新たに導入するソフトウェア・クラウドサービスの購入・利用に関する経費◎上記の初期設定やカスタマイズ、運用、保守、サポートに関する経費 |
対象経費の例 | 導入済みの販売管理ソフトウェアに、新たにインボイス制度対応機能を追加する場合、その追加機能の経費が対象になる。 |
次回公募時期 | 2023年10月頃の予定(※) |
※本メール執筆時には次回募集の公募要領が公表されていないため、上記は6月募集時の情報です。
最新情報は本助成金のページをご確認ください。
中小企業・小規模事業者インボイス相談受付窓口
インボイス制度への対応に取り組む免税事業者のために中小企業庁が設ける相談窓口です。
適格請求書発行事業者の登録要否や各種支援策を相談できます。
まとめ
今回は、インボイス制度の概要やインボイス対応で見落としがちなチェックポイント、インボイス制度に関する公的支援を紹介しました。
インボイス制度の開始に向け、公的支援の利用等についてもご相談を承っています。お気軽にご相談ください。