毎年、多くの事業者が申請する「ものづくり補助金」ですが、4月19日締切の14次公募から大きな変更がありましたのでご紹介します。
「ものづくり補助金」とは
「ものづくり補助金」とは、中小企業等の新たな設備投資を支援する補助金で、平成25年から毎年公募されています。
概要
補助上限額
最大4,000万円(上乗せあり)*14次公募から変更になりました。
補助率
2分の1〜3分の2
補助対象経費
機械装置・システム構築費、技術導入費、外注費 他
基本要件
下記を全て満たす3〜5年の事業計画を策定する
1)会社の付加価値額(※1)が年率平均3%以上増加
2)給与支給総額(※2)が年率平均1.5%以上増加
3)事業場内最低賃金(※3)が、都道府県ごとの最低賃金+30円以上
※1 営業利益と人件費、減価償却費の合計
※2 役員および全従業員に支払った給与等(給料・賃金・諸手当・賞与・役員報酬は含み、福利厚生費・法定福利費・退職金は除く)
※3 設備投資を実施する工場等で働く従業員の中の最低賃金(時給)
14次公募からの変更点の概要
14次公募から変更された点は、下記のとおりです。
「大幅賃上げへの上乗せ支援」の新設
大幅な賃上げに取り組む事業者の補助上限額に、最大1,000万円まで上乗せする制度ができました。
「大幅賃上げへの上乗せ支援」とは、大幅な賃上げ(下記を参照)に取り組む事業者の補助上限額を、最大1,000万円まで上乗せします。
一方で大幅な賃上げが未達成の場合には、上乗せ額の返還が求められます。
「回復型賃上げ・雇用拡大枠」の申請者や、常勤従業員を雇用していない事業者は申請できません。
大幅な賃上げとは
以下の要件を全て満たす必要があります。
要件 | 基本要件 | 大幅な賃上げ |
給与支給総額 | 年率平均1.5%以上増加 | 左記より更に年率平均4.5%以上増加=年率平均6%以上増加 |
最低賃金 | 設備投資を実施する都道府県ごとの最低賃金+30円以上引上げ | 設備投資を実施する工場等で働く従業員の中の最低賃金を毎年+45円以上引上げ |
補助上限額の上乗せ額
従業員数 | 上乗せ額 |
5人以下 | 100万円 |
6~20人 | 250万円 |
21人以上 | 1,000万円 |
「グリーン枠」の見直し・拡充
「グリーン枠」は、温室効果ガスの排出削減等を目的とした、設備・システム投資を支援する制度です。13次公募までは1類型のみでしたが、14次公募から「温室効果ガス削減の取り組み」に応じた3つの類型が新設され、選択肢が広がりました。
グリーン枠の変更点
13次公募:1類型 補助上限額1,000万円〜2,000万円
↓
14次公募:3類型 補助上限額各類型で異なる
類型 | 補助上限額 |
エントリー | 750万円〜1,250万円 |
スタンダード | 1,000万円〜2,000万円 |
アドバンス | 2,000万円〜4,000万円 |
海外展開支援の強化
海外事業の拡大・強化等を目的とした、設備・システム投資等を支援する「グローバル展開型」の内容が一部が変更され、名称も「グローバル市場開拓枠」に変わりました。
具体的には補助下限額が1,000万円から100万円に下がったことで、変更前よりも申請が容易になりました。加えて、対象経費も追加されました。
グローバル市場開拓枠の変更点
■補助下限額 :1,000万円 → 100万円
■補助対象経費:『通訳・翻訳費』や『広告宣伝・販売促進費』の追加(海外市場開拓を行う場合のみ)
14次公募以降の全体像
赤字部分が変更点です。
補助上限額 | 補助率 | 大幅賃上げへの上乗せ支援(※6) | ||
通常枠 | 750万円〜1,250万円(※4) | 2分の1〜3分の2(※5) | +100万円〜1,000万円 | |
回復型賃上げ・雇用拡大枠 | 3分の2 | |||
デジタル枠 | +100万円〜1,000万円 | |||
グリーン枠 | ||||
エントリー | 750万円〜1,250万円(※4) | |||
スタンダード | 1,000万円〜2,000万円(※4) | |||
アドバンス | 2,000万円〜4,000万円(※4) | |||
グローバル市場開拓枠 | 3,000万円 | 2分の1〜3分の2(※5) |
(※4) 補助上限額は従業員数に応じて変化する
(※5) 原則は2分の1だが、小規模事業者や再生事業者は3分の2
(※6) 大幅賃上げへの上乗せ支援の額は、従業員数に応じて変化する
利用のポイント
「大幅賃上げへの上乗せ支援」はハイリスク・ハイリターン
「大幅賃上げへの上乗せ支援」は、補助上限額に最大1,000万円まで上乗せされ、高額な設備投資を後押しします。一方で、要件を達成できなかった場合は、上乗せ分を全額返還しなければならず、大きなリスクを伴います。
そのため「大幅賃上げへの上乗せ支援」は安易に利用せず、コンサルタントと相談しながら、慎重にご検討ください。
「グリーン枠の見直し・拡充」は大きなチャンス
グリーン枠(アドバンス)の補助上限額は、4,000万円に倍増しました。また補助率も無条件で3分の2となり、「グリーン枠」であればより大きな設備投資に挑戦できます。
下記に「グリーン枠」を活用した事例をご紹介します。
グリーン枠の採択事例
■生産工程の労働生産性向上と、脱炭素化を目的とした設備投資
■複数ラインの作業工程の集約・高効率化を目的とした設備投資
グリーン枠は複数の類型に分かれ、複雑化しています。また申請に向けた事前準備も必要なため、早い段階でコンサルタントへ相談することをオススメします。
まとめ
今回の変更点を上手く活用できれば、以前よりも多くの補助金を受け取れるチャンスがあります。
ご利用をご検討の際は、ぜひ早めにご相談ください。
ものづくり補助金の詳細については以下の記事をご参照ください。