経営革新計画とは
簡単に言うと、国が中小企業の「新事業」を応援するための経営計画のことです!
中小企業が「新事業活動」に取り組み、「経営の相当程度の向上」を図ることを目的に策定する中期的な経営計画のことであり、「新事業」の実施を通じて経営の向上に努力する中小企業を応援する国の施策です。
- 自社の課題整理と今後の目標の策定をしたい
- 現状打破のために新事業にチャレンジしたい
といったニーズがある中小企業の方には是非ご活用いただきたい制度です。
一般的な事業計画書との大きな違いは、経営革新計画が「公的なお墨付きを得た計画書」であるという点です。
経営革新計画の制度の対象者
中小企業者・小規模事業者であり、直近1年以上の営業実績があることが対象者の条件です。
中小企業と小規模事業者の定義は以下の通りです。
<中小企業>
以下の資本金の額もしくは従業員の数のいずれかを満たす場合、中小企業と定義します。
資本金(または出資総額) | 常時使用する従業員の数 | |
①製造業・建設業・運輸業・その他の業種(②~④を除く) | 3億円以下 | 300人以下 |
②卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
③サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
④小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
<小規模事業者>
卸売業・小売業 | 常時使用する従業員の数 5人以下 |
サービス業 (宿泊業・娯楽業以外) | 常時使用する従業員の数 5人以下 |
サービス業のうち 宿泊業・娯楽業 | 常時使用する従業員の数 20人以下 |
製造業その他 | 常時使用する従業員の数 20人以下 |
経営革新計画のメリット
日頃の業務で忙しい毎日を過ごす中、再度、自社の経営目標を考えるきっかけになります。また、経営革新計画を作成することで、新たな課題が見えたり、目標達成への道筋が明確になるといったこともあるでしょう。
また、設備投資に対して最大1,250万円の補助金が受けられる「ものづくり補助金」などの審査の加点要素となります。自治体が行う補助金、助成金においても申請要件や加点要素となる場合がありますので、補助金の採択を目指す企業にとって、経営革新計画はぜひ作成しておきたいものと言えます。
加えて、以下の4つの具体的なメリットがあります。
経営革新計画のメリット①:保証・融資の優遇措置
中小企業者に対する融資の制度はいろいろありますが、経営革新計画の承認を受けると、主に次の4つの保証・融資の優遇措置があります。
(1)信用保証の特例
(2)日本政策金融公庫の特別利率による融資制度
(3)高度化融資制度
(4)食品等流通合理化促進機構による債務保証制度
(1)信用保証の特例
経営革新計画の新規事業を行うために金融機関から借入れる資金については、保証限度額の別枠が設けられ、保証枠は2倍になります。また新事業開拓保証の対象となる事業(研究開発費用)の保証限度額は1.5倍(通常2億円が3億円、組合は通常4億円が6億円)になります。
(2)日本政策金融公庫の特別利率による融資制度
日本政策金融公庫では、中小企業者に対して事業に必要な資金を長期・固定で融資しています。経営革新計画に基づく事業を行うために必要な設備資金及び運転資金については金利が優遇(0.65%ないし0.9%)されます。東京都では都の「フォローアップ支援(専門家派遣)」を受けると東京都制度融資の金利が優遇(0.2%ないし0.4%)されます。
新事業育成資金 | 新事業活動促進資金 | |
貸付限度額 | 6億円 | 設備資金7億2千万円(うち運転資金2億5千万円) |
貸付利率 | 基準金利▲0.9% | 基準金利▲0.65% |
(3)高度化融資制度
高度化事業とは、中小企業者が共同で工場団地を建設したり、商店街にアーケードを設置する事業などに対し、都道府県と独立行政法人中小企業基盤整備機構の診断・助言を受けた上で、長期・低利で融資が受けられるものです。
なお、経営革新計画に基づき下記の高度化事業を実施する組合等は、無利子になります。
集団化事業 | 生産や物流に適した場所に工場団地などをつくり、みんなで移転します |
施設集約化事業 | 工場などが1つに集まって、設備の整った施設をつくり、みんなで入居します |
共同施設事業 | 物流センターや最新設備の研究施設など、共同で使い施設をつくります |
設備リース事業 | 1社では導入が難しい設備を組合で購入して、各組合員企業に買取予約付きでリースします |
企業合同事業 | 中小企業者が相互に合併したり、出資会社を設立して、事業の集約化、事業転換、研究開発の成果の利用を図ります |
経営革新計画承認 | 承認された経営革新計画に従って、新商品・新技術開発や情報収集を行うために、共同で利用する研究施設や試験機器などを設置します |
(4)食品等流通合理化促進機構による債務保証制度
食品製造業者等は、経営革新計画の実行にあたり、金融機関から融資を受ける際に、食品等流通合理化促進機構による債務保証を受けられます(保証限度額4億円)。
経営革新計画のメリット②:海外展開に伴う資金調達の支援措置
中小企業者が承認経営革新計画に従って海外において経営革新のための事業を行う場合、以下の資金調達支援を受けることができます。
(1)スタンドバイ・クレジット制度(株式会社日本政策金融公庫法の特例)
(2)クロスボーダーローン制度
(3)中小企業信用保険法の特例
(4)日本貿易保険(NEXI)による支援措置
(1)スタンドバイ・クレジット制度(株式会社日本政策金融公庫法の特例)
中小企業者の外国関係法人等が、現地(海外)の金融機関から期間1年以上の長期資金を借入する際に、日本政策金融公庫が信用状(スタンドバイ・クレジット)を発行し、その債務を保証する制度です。本制度により、外国関係法人等による海外での現地通貨の円滑な調達を支援します。(補償限度額:一法人あたり4億5千万円)
(2)クロスボーダーローン制度
中小企業者の外国関係法人等に対し国内親会社を経由せず、日本政策金融公庫が直接貸付けを行う制度です。本制度により、外国関係法人等の円滑な資金調達を支援します。
(3)中小企業信用保険法の特例
中小企業者が国内の金融機関から海外直接投資事業に要する資金の融資を受ける際、承認を受けた経営革新計画に従って海外において事業を行う中小企業者及び組合等については、海外投資関係保証の限度額を引き上げています。保証限度額は1.5倍(通常2億円が3億円、組合は通常4億円が6億円)になります。
(4)日本貿易保険(NEXI)による支援措置
中小企業者の外国関係法人等が、現地(海外)の金融機関から借り入れを行う際に、地銀等の保証に加え、株式会社日本貿易保険(NEXI)が、海外事業資金貸付保険を付保する制度です。本制度により、外国関係法人等による海外での現地通貨の円滑な調達を支援します。
経営革新計画のメリット③:投資を受けられる
中小企業基盤整備機構が出資する民間のベンチャーファンドを通じて、経営革新計画の承認を受けたベンチャー企業等は資金調達支援および経営支援を受けることができます。また、中小企業投資育成株式会社法の特例として、通常の限度額である資本金3億円を超える企業であっても、経営革新計画の承認を受けることで対象となり支援を受けることができます。
(1)起業支援ファンドからの投資
ベンチャー企業等への投資の円滑化を目的として民間のベンチャーキャピタル等が運営するベンチャーファンド(投資事業有限責任組合)へ中小企業基盤整備機構が出資を行い、当該ファンドがベンチャー企業等へ投資を行うことにより、資金調達支援及び経営支援を行います。起業支援ファンドは、主に創業又は成長初期の段階にあるベンチャー企業等へ投資を行うファンドです。
(2)中小企業投資育成株式会社からの投資
原則、資本金の額が3億円以下の株式会社が、中小企業投資育成株式会社からの投資を受けることによって、自己資本の充実とその健全な成長発展を図ることができます。加えて、経営革新計画に従って、経営革新のための事業を行うために設立する株式会社及び経営革新のための事業を行う株式会社の場合は、資本金の額が3億円を超える場合であっても投資対象になります。
経営革新計画のメリット④:販路開拓を行う場合の支援措置
(1)販路開拓コーディネート事業
商品・サービスを持つ企業のマーケティング企画から、首都圏・近畿圏を舞台に想定市場の企業へのテストマーケティング活動までを支援します。商社・メーカー等出身で広範囲な販路ネットワークを持つ専門家が市場へのアプローチ等を支援します。
(2)新価値創造展
新価値創造展は、中小企業・ベンチャー企業が自ら開発した優れた製品・技術・サービスを展示・紹介することにより、販路開拓、業務提携といった企業間の取引を実現するビジネスマッチングの機会を提供するイベント(展示会)です。
自ら開発した製品・技術・サービスを保有し、ビジネスマッチングを希望する中小企業・ベンチャー企業応募者の中から書面審査により出展者を決定します。
経営革新計画承認の要件
経営革新計画の承認を受けるには、下記の2つの要件をクリアする必要があります。
新事業活動に取り組む計画であること
新規事業が次の5つのいずれかに該当する必要があります。
①新商品の開発または生産
②新役務の開発または提供
③商品の新たな生産または販売の方式の導入
④役務の新たな提供の方式の導入
⑤技術に関する研究開発およびその成果の利用
この中で、「新商品」「新役務」における新規性の捉え方にはご注意ください。
「世界初の取り組みです」や「日本で当社だけです」というレベルでの新規性は不要です。
あくまで、自社として初めての取り組みであり、且つ、同業の中小企業において普及程度が低い取り組みであれば、「新規性」は認められます。
経営の相当程度の向上を達成できる計画であること
経営革新計画の計画期間は3年~8年間で設定します。
計画期間は「研究開発期間」と「事業期間」に分けられ、このうち研究開発期間は0~5年、事業期間は3~5年の期間で作成します。(研究開発期間は、「⑤技術に関する研究開発およびその成果の利用」を選択した場合に必要)
経営革新計画では、事業期間内に「付加価値額」または「一人当たり付加価値額」の伸び率、および「給与支給総額」の伸び率の両方をクリアする計画であることが求められます。
事業期間 | 「付加価値額」または「一人当たり付加価値額」の伸び率 | 「給与支給総額」の伸び率 |
3年計画 | 9%以上 | 4.5%以上 |
4年計画 | 12%以上 | 6%以上 |
5年計画 | 15%以上 | 7.5%以上 |
経営革新計画の申請から承認までの手続き
自治体が承認を行うため、各自治体によって申請内容が若干異なります。登記されている本社所在地のある都道府県の情報を必ずご確認ください。
*東京都の場合は以下の流れとなります。
詳細は各自治体のHPをご確認ください。
経営革新計画の書き方のポイント
経営革新計画の審査におけるポイントは、大きく2つあります。「新規性」と「実現性」です。
新規性
新規性については、既存事業との違いを明確に示すことが重要となります。事業領域がどう違うのか、ターゲットがどう違うのか、販路や販売方法が違うのかなど明確な違いを、図表などを用いながら記載していきます。
また、同業の企業で既に相当程度普及している場合は対象外となるため、類似や競合の事業が存在する場合は、それらの事業と何が異なっているのかを比較表などを用いながら明確に示す必要があります。
実現可能性
実現可能性は、新事業を実施するために必要なリソースが十分にあることを示します。つまり、人・モノ・金に加えて、知識や経験、認知度、ノウハウなども記載することができます。実施するにあたって人員配置/体制図などを用いながら説明をしていくことが重要です。
もし融資を使う予定がある場合には、金融機関の内諾が得られている、すでに相談していて前向きな回答をもらっているなど、現在の状況を示すことで実現の可能性が高いという印象を与えることができます。
経営革新計画作成支援サービス
上記のようなポイントを押さえた経営革新計画の作成には、しっかりとした計画を立てる必要があり、相当の時間がかかります。サポート致しますので、以下のフォームから是非ご相談ください!