「生成AIが便利だとは聞くけれど、実際の仕事でどう使えばいいのか分からない…」
そんな悩みを抱えるビジネスパーソンは少なくないでしょう。しかし、AIはすでに一部の先進的なユーザーたちの手によって、驚くほど多様な業務を自動化・効率化するツールへと進化しています。
今回は、求人広告の自動生成から、190ページに及ぶWebサイトの抜本的改善、面倒な請求書管理の自動化、さらには営業リストの作成まで、AI活用実例をご紹介。あなたの仕事を劇的に変えるヒントがここにあります。
はじめに:AIを「知る」から「使いこなす」フェーズへ
生成AIが世に出てから1年以上が経過し、多くの人がその存在を認知するようになりました。しかし、そのポテンシャルを最大限に引き出し、日々の業務に活かせている人はまだ少数派かもしれません。今回は、そんな「知っているだけ」の状態から一歩踏み出し、AIを具体的な課題解決のツールとして「使いこなす」ための実践知を共有します。
【採用業務の自動化】Google AI Studioで「求人広告ジェネレーター」を自作
最初の事例は、採用業務に長年携わってきた経験を踏まえた、Google AI Studioを活用した「求人広告ジェネレーター」の開発です。
課題:営業と制作の分断、媒体ごとの最適化の手間
求人広告代理店の現場では、顧客対応をする営業担当と、原稿を作成する制作担当が分かれていることが多く、スピーディーな原稿作成のボトルネックになることがありました。また、Indeedやハローワークなど、掲載する媒体ごとに効果的な書き方やルールが異なるため、専門知識がないと質の高い原稿を作るのが難しいという課題がありました。
解決策:2つのモードを持つAIアプリを開発
そこでGoogle AI Studioのアプリ開発機能「Build」を使い、誰でも簡単に質の高い求人原稿を作れるツールを開発しました。
- 入力モード:職種や給与、勤務地などの項目をフォームに入力するだけで、AIが求人広告サイトのルールに則った原稿を生成する。
- コピペモード:企業の採用ページや既存の資料の文章をそのまま貼り付けるだけで、AIが内容を解析し、求人広告のフォーマットに再構成する。
Webサイトの文章をコピペするだけで各サイトに最適化された原稿が完成
たとえばマクドナルドの公式採用ページの文章を「コピペモード」に貼り付けると、AIは即座に文章を解析し、「仕事内容」「アピールポイント」「求める人材」といった項目に分け、その求人検索エンジンで評価されやすい形式に整えられた原稿を自動で生成。さらに、プロンプトを調整することで、季節ごとの需要に合わせた表現を加えるなど、柔軟なカスタマイズも可能です。
【Webサイト改善】ChatGPTを最強のWebコンサルタントにする
次に、ChatGPTを駆使して、大規模なWebサイトを改善するプロセスの紹介です。
サイト全体をZIP化して丸ごと分析
まずWebサイトの全ページのデータをZIPファイルに圧縮し、それをChatGPTにアップロード。サイト全体の文脈をAIに理解させるというアプローチを取りました。
「弱点を教えて」の一言で劇的に変わるAIの回答
最初は「SEOについてどう思う?」といった漠然とした質問をしていましたが、得られるのは当たり障りのない一般論ばかり。そこで、質問の仕方を変えました。
「このサイトの信頼性を上げる上での『弱点』は何ですか?」
このプロンプトがブレークスルーとなりました。AIは具体的な弱点として「xxxであるという重要な情報が記載されていない」などと指摘。他にも「どのページを削除すべきか?」と聞けば重複コンテンツを特定し、「誤字脱字は?」と聞けば全ページをチェックして修正案を提示するなど、まるで優秀なWebコンサルタントのように的確なフィードバックを返し始めたのです。
具体的な改善プロセス:コンテンツ整理、誤字脱字チェック、デザイン修正
この対話を通じて、コンテンツの整理、一括での誤字脱字修正、さらには「行政っぽい」と指摘されたデザインの改善まで、多岐にわたるサイト修正を効率的に進めることができました。AIに「強み」ではなく「弱点」を尋ねるという発想の転換が、非常に有効なテクニックであることがわかりました。
【管理業務の効率化】GeminiとGmail連携を使いこなす
GoogleのAIであるGeminiはGoogleの各種サービスとのスムーズな連携が取れるのが大きな特徴です。日々の面倒な管理業務を劇的に効率化する事例を紹介します。
Gmailと連携!大量の請求書を自動で収集・整理
以前より、利用しているコワーキングスペースなどから毎月送られてくる大量の請求書メールの管理に頭を悩ませていました。そこで、GeminiのGoogleサービス連携機能を活用。「Gmail内にある取引先からの請求書メールを全て探し出し、Google Driveの特定のフォルダに格納して」と指示したところ、AIが自動でメールを検索し、添付されているPDFを全て収集・整理してくれたのです。Gmail宛に請求書をもらっていけば手作業でのファイル整理の手間がゼロになる画期的な活用法です。
【教育・クリエイティブ】現場の悩みをAIアプリで即解決
Google AI Studioを使うことで、現場のリアルな課題を解決するアプリも簡単に作ることができます。
公平な授業運営を支援する「ランダム指名アプリ」
授業中に生徒を指名する際、どうしても偏りが出てしまうという悩みを解決するため、「100人の生徒の中からランダムで1人を指名するアプリ」を開発。わずか5分で完成し、授業の公平性を保つツールとして活用しています。
発想を広げる「セッテルカステン」風アイデア創出ツール
「第二の脳」とも呼ばれるメモ術「セッテルカステン」をデジタルで再現。個別のアイデアをメモとして蓄積し、AIが関連性の高いメモ同士を繋ぎ合わせて新しい発想を促すアプリです。
各国の英語訛りを学ぶ「発音練習アプリ」
グローバルな環境で働く上で課題となる、インド英語やオーストラリア英語などの独特な訛りを聞き取る訓練をするためのアプリ。各国のアクセントでAIが文章を読み上げ、リスニングクイズに答える形式で学習できます。
未来の働き方を予感させるAIツール「Grok」
最後に、X(旧Twitter)社が開発するAI「Grok」に搭載された、驚異的な動画生成機能をご紹介。
静止画の一部だけを動かす革命的な動画生成機能
今までの動画生成AIツールで、バナー広告のような人と文字が入った画像において、人だけを動かそうとしてもうまくいきませんでした。(文字が動いてしまう、文字が崩れる、など)
Grok4では「人物だけを動かして」と指示するだけで、背景や文字は完全に静止したまま、人だけを自然に動かすことができます。
Web広告の常識を覆す可能性
上記の通り、従来の動画生成AIでは、画像全体が揺らいでしまい、特に文字情報が崩れてしまうのが大きな課題でした。しかしGrok4は、画像内の要素を正確に認識し、指定した部分だけを違和感なくアニメーション化できます。これにより、これまで専門的なソフトや技術が必要だった動きのあるバナー広告(アニメーションGIFなど)が、誰でも一瞬で作成可能になります。これは、Webマーケティングの世界に大きな変革をもたらす可能性を秘めた技術です。
まとめ:あなたの「面倒くさい」をAIで解決しよう
AIを多様な現場で、具体的な課題解決のために使っていくためには、まず自分の身の回りにある「面倒くさい」「もっとこうなればいいのに」という小さな課題を見つけ、それを解決するためにAIを試してみるということが大切です。何事もインプットとアウトプット。この両輪をスピーディーに回していくことで成長が生まれます。
AIはもはや、遠い未来の技術ではありません。あなたの目の前にある、最も身近な問題解決ツールなのです。この記事で紹介された事例をヒントに、ぜひあなたも「AIで何かを解決してみる」という一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。

