定年を65歳以上に引き上げたい、60代の社員が働き続けられる制度を整えたい。そうした事業主を支援する厚生労働省系の助成金が、65歳超雇用推進助成金です。運営は独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)で、令和8年度も3つのコースが用意されています。
支給額は、継続雇用促進コースでは60歳以上の対象被保険者数と措置の内容で細かく分かれ、ほかの2コースでは措置の種類や対象者1人あたりの額で決まります。この記事では、令和8年度の制度のご案内(令和8年4月8日掲載)にもとづいて、支給額と申請のタイミングを整理します。令和8年度の支給申請の手引きは、継続雇用促進コースでは令和8年度中に支給申請を行う事業主に、評価制度等雇用管理改善コースと無期雇用転換コースでは令和8年度中に計画申請を行う事業主に適用されます。過去の年度の制度が適用される申請は、その年度の手引きで確認してください。公式情報はJEEDの助成金のページにあります。
65歳超雇用推進助成金とは
高年齢者が年齢に関わりなく働ける環境づくりを後押しする助成金です。65歳以上への定年引上げ、高年齢者の雇用管理制度の整備、高年齢の有期契約労働者の無期雇用への転換に取り組んだ事業主に支給されます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| — | — |
| 運営 | 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) |
| 申請先 | 都道府県支部の高齢・障害者業務課(東京・大阪は高齢・障害者窓口サービス課) |
| 申請方法 | 持参、郵送、電子申請 |
| 共通の対象事業主 | 雇用保険適用事業所の事業主(支給申請日と支給決定日の時点で、雇用保険被保険者がいる事業所の事業主)で、高年齢者雇用安定法の第8条または第9条第1項と異なる定めをしていない事業主。このほかにコースごとの要件があります |
3つのコース
| コース | 内容 |
|---|---|
| — | — |
| 65歳超継続雇用促進コース | 65歳以上への定年引上げ、定年の定めの廃止、66歳以上への継続雇用制度の導入、他社による継続雇用制度の導入のいずれかを実施する |
| 高年齢者評価制度等雇用管理改善コース | 賃金・人事処遇制度や健康管理制度など、高年齢者の雇用管理制度を整備する |
| 高年齢者無期雇用転換コース | 50歳以上かつ定年年齢未満の有期契約労働者を無期雇用労働者に転換する |
65歳超継続雇用促進コース
定年を65歳以上に延ばす、定年をなくす、66歳以上の継続雇用制度を入れる、他社による継続雇用制度を入れる。このいずれかを実施した事業主に支給されます。額は、実施した措置、引き上げた年齢、対象被保険者の数で決まります。
定年引上げ・定年の定めの廃止の支給額
| 対象被保険者数 | 65歳への定年引上げ | 66〜69歳への定年引上げ(引上げ幅5歳未満) | 66〜69歳への定年引上げ(引上げ幅5歳以上) | 70歳以上への定年引上げ | 定年の定めの廃止 |
|---|---|---|---|---|---|
| — | — | — | — | — | — |
| 1〜3人 | 15万円 | 25万円 | 40万円 | 45万円 | 60万円 |
| 4〜6人 | 20万円 | 32万円 | 65万円 | 70万円 | 120万円 |
| 7〜9人 | 25万円 | 39万円 | 110万円 | 115万円 | 180万円 |
| 10人以上 | 30万円 | 46万円 | 135万円 | 140万円 | 240万円 |
引上げ幅は、引上げ後の年齢と、改正前の就業規則で定めていた定年年齢または継続雇用年齢との差です。旧定年年齢と旧継続雇用年齢は、就業規則で定めていた年齢のうち、平成28年10月19日以降で最も高い年齢です。定年年齢などが職種や勤務形態の区分で異なる場合は、引上げ後の年齢は区分のうち最も低い年齢で数えます。定年引上げの支給対象になるのは、旧定年年齢が70歳未満の場合に限られます。すでに70歳以上の年齢まで雇用する継続雇用制度を定めている事業主が66歳以上の継続雇用制度などを新たに実施する場合は、それまでの制度が対象者基準ありで、新たに希望者全員を70歳以上まで雇う制度を導入したときに限られます。
表の人数に数えられる対象被保険者は、支給申請日の前日に、事業主に1年以上継続して雇用されている60歳以上の雇用保険被保険者のうち、改正前の規則で定年前の無期雇用労働者だった人、または定年後の継続雇用者で、改正後の規則が適用されている人です。職種などの区分ごとに制度を改正する場合は、複数の区分の対象者が合算されますが、規則を改正しても年齢が引き上がっていない区分の人は数えられません。JEEDのパンフレットの例では、定年前から有期契約のパートで働く人は対象外とされています。60歳以上の社員の人数をそのまま当てはめないでください。
66歳以上の継続雇用制度を導入する場合は、別の表があり、対象者基準の有無でも額が変わります。希望者全員を70歳以上まで雇う制度なら、被保険者数1〜3人で40万円、10人以上で130万円です。他社による継続雇用制度の導入にも専用の表があります。定年引上げと継続雇用制度の導入をあわせて実施しても、支給額はいずれか高い額だけです。
主な支給要件
- 労働協約または就業規則により、次のいずれかを実施し、就業規則を労働基準監督署へ届け出ていること。ア 旧定年年齢を上回る65歳以上への定年引上げ(旧定年年齢が70歳未満の場合に限る)、イ 定年の定めの廃止、ウ 旧定年年齢と旧継続雇用年齢を上回る66歳以上の継続雇用制度の導入、エ 他社による継続雇用制度の導入
- 支給申請日の前日に、1年以上継続して雇用されている60歳以上の雇用保険被保険者が1人以上いること(短期雇用特例被保険者と日雇労働被保険者を除き、期間の定めのない労働契約の人または定年後の継続雇用者に限る)
- 高年齢者雇用等推進者を選任し、55歳以上の高年齢者に対して、次のa〜gの措置を1つ以上実施していること。a 職業能力の開発・向上のための教育訓練の実施、b 作業施設・方法の改善、c 健康管理・安全衛生の配慮、d 職域の拡大、e 知識・経験等を活用できる配置・処遇の推進、f 賃金体系の見直し、g 勤務時間制度の弾力化
申請期間
制度の実施日の属する月の翌月から数えて4か月以内の、各月の月初から15日までに申請します。15日が土曜日、日曜日、祝日などの場合は、翌開庁日までです。郵送は、消印日ではなく、支部への到着が申請期間内である必要があります。
また、各月または四半期ごとの予算額の上限を超えるおそれがあるとき、または各月の申請受付件数の動向から月の予算額の上限を超えるおそれが高いとJEEDが認めるときは、支給申請の受付が停止される場合があります。JEEDのページには申請書の受付状況が掲載され、実績は毎月中旬に掲載する予定とされています。制度の実施日を決める前に、申請できる期間と受付状況を確認してください。
高年齢者評価制度等雇用管理改善コース
先に「雇用管理整備計画書」を提出して認定を受け、計画の実施期間内に雇用管理整備の措置を実施した事業主が対象です。措置は、55歳以上の高年齢者を対象に労働協約または就業規則に規定し、1人以上の支給対象被保険者に実施・適用する必要があります。支給対象被保険者は、支給申請日の前日に1年以上継続して雇用されている60歳以上の雇用保険被保険者で、整備した制度が適用され、計画終了日の翌日から6か月以上継続して雇用されている人です。計画終了日の翌日から6か月間の運用状況を明らかにする書類も整備する必要があります。
| 措置の内容 | 中小企業 | 中小企業以外 |
|---|---|---|
| — | — | — |
| 高年齢者の職業能力を評価する仕組みを活用した賃金・人事処遇制度の導入または改善(高年齢者向けの専門職制度など、適切な役割を付与する制度を含む) | 60万円 | 45万円 |
| 上記以外の措置(労働時間制度、在宅勤務制度、研修制度の導入または改善、健康管理制度の導入など) | 30万円 | 23万円 |
認定された計画で複数の措置を行う場合は、上の2つのうち高い額に、機器等の導入分を加えた額が支給されます。措置の実施に伴って必要な機器等を導入した場合は、導入に要した経費(算定の対象は上限50万円)に60%(中小企業以外は45%)を乗じた額が上乗せされます。上乗せ額は最大で、中小企業が30万円、中小企業以外が22万5千円で、100円未満は切り捨てです。経費を支払い、証拠書類で確認できることが必要です。
計画書の提出期間は、計画開始日の6か月前の日から3か月前の日までです。手引きの申請期間の例では、計画の実施期間は1年以内で、その後に6か月の確認期間があり、支給申請期間は2か月以内とされています。
高年齢者無期雇用転換コース
無期雇用転換計画の認定を受け、50歳以上かつ定年年齢未満の有期契約労働者を、無期雇用労働者に転換した場合に、対象労働者1人につき40万円(中小企業以外は30万円)が、国の予算の範囲内で支給されます。1支給申請年度(4月から3月)につき、1適用事業所で対象にできるのは10人までで、人数は無期雇用へ転換した日を基準に数えます。
計画書の提出期間は評価制度等雇用管理改善コースと同じで、計画開始日の6か月前の日から3か月前の日までです。計画期間は2年から3年の間にします。支給の要件として、転換後は6か月以上継続して雇用し、転換後6か月分の賃金を、転換日以後12か月後の賃金支払日までに支払う必要があります。手引きの申請期間の例では、賃金支払日の後の支給申請期間は2か月以内とされています。このほかにも手引きに要件があります。
つまずきやすい点
- 高年齢者雇用安定法の遵守は、就業規則の記載で確認される。 第8条または第9条第1項と異なる定めをしていないことは、労働協約または就業規則に明記されているかどうかで確認されます。実際には継続雇用等を行っていても、明記がなければ支給対象になりません。申立書は審査の確認書類として扱われません。
- 提出済みの添付書類は、事業主の都合では差し替えも訂正もできない。 JEEDのパンフレットでは、不適正支給を防ぐため、一度提出された添付書類を事業主の都合などで差し替えたり訂正したりすることはできないとされています。添付書類は、実際に使っているものか、その複写である必要があります。作っていなかった契約書などを後から作って添付することは不適切で、不正受給につながるおそれがあります。
- 併給調整がある。 同じ行為を対象に2つ以上の助成金等を同時に申請した場合や、同じ経費の負担を軽くするために申請した場合は、双方の要件を満たしていても一方しか支給されないことがあります。キャリアアップ助成金など複数を検討するときは、先に併給の可否を確認してください。
- 「手引き」で最終確認が要る。 パンフレットは制度の概略です。要件の全体は各コースの「支給申請の手引き」に書かれています。
よくある質問
Q. 定年を70歳に引き上げれば、120万円もらえますか?
60歳以上の被保険者数で変わります。70歳以上への定年引上げは、被保険者数1〜3人で45万円、4〜6人で70万円、7〜9人で115万円、10人以上で140万円です。120万円になるのは、定年の定めの廃止で被保険者数4〜6人の場合などです。
Q. 有期契約のパートの高年齢者を無期雇用にしたい場合はどのコースですか?
高年齢者無期雇用転換コースが候補です。対象は、有期契約労働者として雇用される期間が転換日で通算1年以上5年以内の、50歳以上かつ定年年齢未満の人です。転換日に64歳以上でないこと、派遣労働者でないことも求められます。有期契約が通算5年を超えて、労働契約法第18条にもとづき本人の申込みで無期転換した人は対象になりません。転換後は、65歳(同種の業務に従事する期間の定めのない労働契約の労働者に適用される定年が65歳を超える場合は、その年齢)以上まで雇用される見込みが必要です。計画の認定を先に受ける必要があるため、転換の時期は計画に合わせて決めます
Q. 申請は紙でないとできませんか?
持参、郵送のほか、電子申請でも行えます。電子申請の手順は、JEEDのページにe-Gov電子申請のマニュアルが掲載されています。
申請の相談
65歳超雇用推進助成金は、制度の実施日や計画の開始日から申請の期間が決まります。どのコースが合うか、いつまでに何を出すかを整理したい場合は、補助金・助成金の相談ページからご連絡ください。補助金・助成金の情報は補助金データベースでも探せます。
厚労省系の助成金全体の動きは厚生労働省の助成金まとめでも確認できます。
65歳超雇用推進助成金申請支援サービス

65歳超雇用推進助成金は要件を満たせば必ずもらえる反面、タイミングを逃すと申請ができません。制度を制定する際には1度しか申請のチャンスがありませんので、高齢者を雇用されている事業者はぜひご活用いただきたい助成金です。以下のフォームから是非ご相談ください!
ご相談の前に、支援の内容と進め方と、担当する中小企業診断士のプロフィールをご覧いただけます。


