東京都の「躍進的な事業推進のための設備投資支援事業」(躍進的設備投資助成金)には、アップグレード促進区分があります。結論から書くと、令和8年度第3回(第14回)の募集にも同じ名前の区分が残っており、助成額は1億円から2億円、助成率は3/4以内です。タイトルの「最大2億円」は、現行の公式の数字と合っています。内容は第14回募集要項(公社)と第14回の募集ページ(公社)を2026年10月7日に確認して書いています。制度全体の概要と、他の区分の条件は躍進的設備投資助成金の解説記事にまとめています。
この記事は、アップグレード促進区分に絞って、条件、必要書類、交付の流れ、つまずきやすい点を整理します。
第14回のアップグレード促進区分の要点
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 区分名 | Ⅲ アップグレード促進(申請者区分D) |
| 助成率 | 3/4以内 |
| 助成額 | 1億円から2億円 |
| 必須の要件 | ゼロエミコースと賃上げコースの両方 |
| 助成対象期間 | 令和9年4月1日から最長令和10年9月30日 |
| 申請受付 | 令和8年10月23日(金)9時から11月24日(火)13時まで(Jグランツ) |
| 基準日 | 令和8年10月1日 |
ほかの区分は助成額が100万円から1億円で、助成率も異なります。アップグレード促進だけが、助成額の下限が1億円から始まります。
2025年秋の第10回からの変わり方
この区分は、2025年秋の第10回の募集要項にも載っていました。第10回では「Ⅴ アップグレード促進」(申請者区分F)、第14回では「Ⅲ アップグレード促進」(申請者区分D)と、区分の番号と記号が変わっています。助成率3/4以内と上限2億円、下限1億円は、第10回と同じです。第10回の要項はこちらで見られます。
どんな事業が対象か
募集要項は、対象を「競争力強化及び生産性向上を実現し、地域経済の中心となるべく成長するために必要となる機械設備を新たに導入する事業」と定めています。取引先企業の価格転嫁や賃上げを後押しする事業という位置づけで、事業例には「機械高度化に伴う受注増に対応した地域経済との連携」と「サプライチェーンの都内回帰」が挙がっています。
設備投資のあと、従業員一人当たりの付加価値額(労働生産性)を年率3%以上向上させる計画も必要です。募集要項は、設備投資の実施から3年後から5年後までの間のいずれかで達成する計画であることを求めています。
満たす要件は2つのコース
この区分では、ゼロエミコースと賃上げコースのどちらの要件も満たす必要があります。競争力強化と後継者チャレンジの区分では、2つのコースは併用できないため、ここは大きな違いです。
ゼロエミッション要件
ゼロエミッション概要書を作って提出します。企業全体で、省エネルギー率5%以上を達成するための取組を掲げます。アップグレード促進区分では、省エネ診断または省エネ最適化診断の診断報告書の内容にもとづいて取組を書くことが決まりで、診断報告書そのものも提出書類に入ります。概要書の内容は総合的に審査され、省エネ効果が高いと見込まれる計画が評価されます。
賃上げ要件
- 賃金引上げ計画期間の給与支給総額を、基準にした12か月分の1.02倍以上にすること
- 設備を置く事業場内の最低賃金(事業場内で最も低い賃金)を、地域別最低賃金に30円を加えた水準以上にすること
賃金引上げ計画期間は、助成事業が完了した月の翌月から12か月間です。基準にする12か月は、基準日が属する月の前月から遡った期間で、第14回は令和7年10月から令和8年9月です。給与支給総額は賃金台帳の差引支給額で、役員を除き、非常勤を含む全従業員が対象です(個人事業主は代表者を除きます)。全従業員分の賃金台帳の写しも提出します。
この区分だけで必要な2つの書類
生産(増産)要請に関する証明書
申請書の事業計画に書いた製品・サービスについて、取引が生じる受注企業(申請者ではありません)に書いてもらいます。申請者が発注者、証明書を出す側が受注者という関係が前提です。
- 受注企業の生産拠点が東京都内の場合は、基準日現在で都内に登記簿上の本店または支店があること
- 生産拠点が東京都外の場合は、基準日現在で都内に登記簿上の本店があり、神奈川県、埼玉県、千葉県、群馬県、栃木県、茨城県、山梨県の工場等であること
親会社、子会社、グループ企業などの関連会社は、証明書を出せません。資本関係のある会社、役員や従業員を兼任している会社、代表者の三親等以内の親族が経営する会社、自社やその役員・従業員が顧問やコンサルタントの契約をしている会社も含まれます。ペーパーカンパニーや事業実態のない会社も対象外です。
パートナーシップ構築宣言の写し
宣言日、企業名、代表者氏名が書かれた写しを出します。宣言は、サプライチェーン全体の付加価値向上を目指して、発注者の立場から代表権のある方の名前で出すものです。手続きはパートナーシップ構築宣言ポータルサイトで確認できます。
助成金は2回に分けて交付される
助成金は設備代金を支払ったあとに交付される後払いです。さらにこの区分は、賃上げコースの方法に沿って2回に分けて交付されます。1回目は助成率2/3で計算した額、2回目は賃金引上げ計画の達成を確認したあとに、助成金額との差額が交付されます。受け取り終えるまでの期間が長くなります。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 対象経費 | 1億5,000万円 |
| 助成金額(助成率3/4) | 1億1,250万円 |
| 1回目 | 1億5,000万円×2/3=1億円 |
| 2回目 | 1億1,250万円−1億円=1,250万円 |
この例は募集要項に載っている交付イメージです。賃上げ計画が達成できなかった場合は、公社が通知する助成金の額の確定に従うことになります。
スケジュールと相談会
| 項目 | 時期 |
|---|---|
| 申請書類の提出 | 令和8年10月23日(金)9時から11月24日(火)13時まで |
| 一次審査 | 12月中旬から1月中旬 |
| 二次審査(面接審査、価格審査) | 2月中旬から2月下旬 |
| 助成対象事業者の決定 | 3月中旬 |
申請はGビズIDプライムのアカウントが必要で、公社は余裕を持った事前登録を求めています。個別相談会は令和8年10月9日(金、国分寺)と10月26日(月、秋葉原)に事前登録制(先着順)で開かれます。申込みは第14回の募集ページ(公社)からです。日程は申請状況によって変わることがあるため、最新の情報は公社のページで確認してください。
つまずきやすい点
- 証明書を頼める取引先が見つからない。関連会社は発行主体になれないため、申請を考え始めた時点で、受注関係にある取引先に早めに相談します。
- 診断報告書の準備が遅れる。省エネ診断または省エネ最適化診断の報告書が申請書類に入るため、書類づくりの前に診断の手配を済ませます。
- 賃上げ要件を軽く見る。給与の総額と最低賃金の両方が条件で、計画どおりに進まないと2回目の交付が確定額に影響します。
- 自己負担を軽く見る。助成率は3/4以内なので、対象経費の4分の1以上は自己負担です。公社は、自己負担なしやキャッシュバックをうたう勧誘に注意するよう呼びかけています。
よくある質問
区分の名前は変わりましたか?
名前は同じ「アップグレード促進」です。募集要項での区分番号が、第10回の「Ⅴ」から第14回の「Ⅲ」に変わりました。
賃上げコースだけ満たせば申請できますか?
申請できません。この区分は、ゼロエミコースと賃上げコースのどちらの要件も満たす必要があります。
他の助成金と同じ設備で申請できますか?
公社の他の助成事業と同一の機械設備(同一型番)で併願することはできません。ものづくり補助金など他機関の助成金とは併願できます。ただし、同一の設備で二重に助成を受けることはできず、両方に採択された場合はどちらかを辞退します。
申請の相談
この区分は、取引先の証明書、省エネ診断、賃上げ計画と、準備する書類の数が多い制度です。自社が申請できるか、どの順番で準備するかを整理したい場合は、補助金・助成金の相談ページからご連絡ください。補助金・助成金の情報は補助金データベースでも探せます。
支援サービス

チームを組んでサポートします。お気軽に以下のフォームから是非ご相談ください!
ご相談の前に、支援の内容と進め方と、担当する中小企業診断士のプロフィールをご覧いただけます。


