新たな技術を開発して受注を増やしたい、製造工程を改善して品質をアップさせたい…。
そういった思いをお持ちの事業者さま、東京都版のものづくり助成金である「明日にチャレンジ中小企業基盤強化事業助成金」(以下「明日にチャレンジ助成金」)をご存じでしょうか?
明日にチャレンジ助成金は、技術・サービスの開発により受注機会増大や事業範囲拡大を目指す、都内の中小企業を支援する制度です。
今回はこの助成金について解説します。
本助成金は令和2年度から実施されていますが、1月29日時点では令和7年度の公募は発表されていません。そのため、直近の令和6年度第2回公募の内容をもとにご説明します。
明日にチャレンジ助成金とは
概要
発注者の仕様に基づき製品・サービスを提供する「受注型中小企業」が利用できる助成金です。
受注型中小企業とはいわゆる下請企業を指します(後述参照)。
受注型中小企業が自社の技術・サービスを高度化・高付加価値化するための技術開発にかかる経費に対して、助成金が交付されます。
※事業協同組合などの団体や企業グループも対象となりますが、分かりやすくするため、単一の中小企業を前提に説明します。
申請できる要件
以下の要件をすべて満たす事業者が、本助成金を申請できます。
①中小企業または個人事業者
②本店が東京都内(個人事業者は都内で開業届を提出済み)
③公募要領で定める基準日時点で2年以上事業を営んでいる
④以下ア~ウの条件を満たす受注型中小企業である
ア.発注者の仕様に基づき製品・サービスを提供している
イ.製品・サービスが、発注者の製品・サービスの一部となる
ウ.最終消費者に自社ブランドで製品・サービスを提供していない
出典:令和6年度(第2回)公募要領より
本助成金は、都内の産業振興を目的に、下請企業の技術向上や経営基盤の強化を図るものですので、④の要件がポイントです。
また、都内に本社があれば、1都7県(※)に所在する自社工場も設備投資の実施場所として認められます。
※東京、神奈川、埼玉、千葉、群馬、栃木、茨城、山梨
助成対象となる事業
製造業を営む事業者は技術の高度化・高付加価値化に向けた技術開発などを行うことが対象となります。
一方で、製造業以外の事業者は、サービスの高度化・高付加価値化に向けた技術開発などを行うことが対象となります。
なお、最終消費者に自社ブランドとして提供される製品・サービスに関するものではないので注意が必要です。
具体的には、以下のような取組み事例があります。
◆製本専業会社が、分断されていた加工工程を一本化し、高性能断裁機を設置することで、生産効率向上と品質安定化を図る
◆縫製加工会社が、CNC(コンピュータ数値制御)ミシンを導入し、熟練作業員の暗黙知技術をプログラム化することで、高級車向け内装縫製品の量産対応を実現する
◆クリーニング会社が、目視で行っている検査工程と半自動で行っているタタミ工程を自動化し、品質向上・生産性向上を図る
本助成事業を運営する東京都中小企業団体中央会のサイトには、これ以外にも多数の事例が公開されています。参考にしてください。
助成対象となる経費と上限額・助成率
技術開発等の取組みに関する以下の経費が対象となります。
・原材料や副資材の購入費
・機械装置等の購入・リース・レンタル・据付費
・自社で実施できない部分の委託や外注加工に係る経費
・特許等の出願費用
・開発した技術等の展示会出展費用や広告費用
・ソフトウェア開発に直接従事する社員の人件費
助成上限額と助成率は、事業者の規模により下表のようになります。
小規模企業に該当する事業者が一般区分に申請することも可能です。
小規模企業:従業員数が、製造業・その他20人以下、商業・サービス業5名以下の事業者
規模の区分 | 助成上限額 | 助成率 |
小規模企業 | 1,000万円 | 助成対象と認められた経費の3分の2以内 |
一般 | 2,000万円 |
助成事業(技術開発等)を実施する期間
公募要領で定める期間内に、機械装置等の設置や技術開発等を完了させます。
昨年春の公募では、令和6年7月1日から令和7年9月30日までの1年3ヵ月とされていました。
助成金交付までの流れ
申請から交付までの手続き
助成金の申請から交付までの手続きは、大きく次の3段階があります。
①申請から交付決定まで
・技術開発の内容を記載した事業計画書などの書類を提出します。
・審査は「書類審査」のほかに「面接審査」があります。
・面接審査には申請企業から1~2名が出席し、10分間の質疑応答が行われます。
・事務局の審査に通過すると、交付決定が通知されます。
②助成事業の実施
・機械装置等の購入や外部委託などの取組みは、交付決定後に発注・契約し、実施期間内に支払いまで完了させる必要があります。
※遂行状況の報告や事務局の現地調査が必要となる場合があります
③実績報告から助成金交付まで
・助成事業の取組みが完了後、実績報告書を作成し提出します。
・事務局による完了検査が終わると、助成金の請求・支払となります。
スケジュール
例として、令和6年度第2回公募は以下のスケジュールでした。
公募要領が公開されてから1ヵ月強で申請書類を提出する必要がありますので、計画的に進めることが大切です。
出典:令和6年度第2回公募要領より
申請のポイント
申請書類は、設備投資や技術開発等に関する事業計画です。
審査項目に沿うよう、わかりやすく記述する必要があります。
【審査項目】
・技術審査
①事業目的との適合性 ②技術・サービスの優位性 ③計画の妥当性 ④目標の実現性 ⑤市場性・改善効果
・経営審査
①組織力 ②販売力 ③財務の健全性
まとめ
明日にチャレンジ助成金は、受注型中小企業が技術開発などを通じて受注機会増大や事業範囲拡大を目指す為に活用できる制度です。
本助成金を活用すれば、資金面の負担を軽減しながら技術開発などを実現することも可能です。
事業計画(申請書類)の作成には専門知識やノウハウが求められます。
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