起業・創業の前後は多くの設備資金や運転資金が必要となり、自己資金だけでは足りないことが多々あります。
しかし、創業時は事業の実績が乏しいため、民間金融機関から希望どおりに融資を受けることは非常に困難です。
そこで今回は、創業時に利用できる融資制度をご案内します。
創業融資制度の概要
創業融資とは事業を始める際に、利用できる融資のことです。
通常の融資は事業の実績をもとに審査される一方で、創業融資は事業計画や本人の経験・実績などが重要視されます。
創業融資の種類
代表的な創業融資制度は、下表のとおりです。
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日本政策金融公庫 の新規開業資金 | 制度融資「創業」 | 創業支援融資 | |
対象地域 | 日本全国 | 全国(下記の事例は東京都の場合) | 東京23区(下記の事例は豊島区の場合) |
制度の主体 | 日本政策金融公庫 | 地方自治体 | 東京23区 |
対象者(いずれかを満たす場合) | ・事業を始める方 ・税務申告を2期終えていない方 | 都内に事業所または住所があり、下記のいずれかを満たす・事業を始める方 ・創業5年未満の中小企業者 他 | ・1ヶ月以内に豊島区内に個人で起業する計画を有する・ 2ヶ月以内に豊島区内に新たな法人を設立する計画を有する 他 |
融資限度額 | 7,200万円 (うち運転資金4,800万円) | 3,500万円 | 1,500 万円 |
利息 | 2.6%〜3.8%→1.95%〜3.15% ※1 | 1.5%〜2.2% ※2 | 豊島区の場合は0% |
保証協会の保証料 | 不要 | 必要 ※3 | 必要 |
担保 | 原則不要 | ||
資金使途 | 設備資金・運転資金 | ||
メリット | ・全国で利用可能・審査が早い | ・金融機関との関係ができる | ・利息がゼロ・金融機関との関係ができる |
※1 2024年6月1日時点で、無担保・税務申告を2期終えていない場合
※2 責任共有制度の対象となるか否かによって、利率が異なる(対象となるか否かは、取扱指定金融機関による)。責任共有制度の対象となった場合、返済不能に陥った際は信用保証協会が80%、金融機関が20%の責任を負う。
※3 保証料の3分の2を東京都が負担
日本政策金融公庫の新規開業資金
概要
これまで多くの創業者が利用していた「新創業融資制度」は廃止され、2024年2月16日に「新たに事業を始める方または事業開始後税務申告を2期終えていない方向けが、無担保・無保証人で利用する場合の融資制度」が新設されました。
今回ご紹介する制度は、新設された内容に基づいています。
対象者
下記のいずれかに該当する方が、申込の対象者となります。
・ 新たに事業を始める方
・ 税務申告を2期終えていない方
特徴
■メリット
・日本政策金融公庫は全国にあり、利用しやすい
・融資限度額が大きい
・保証協会への申込みが不要なため、短期間で審査される
■デメリット
・民間金融機関との関係が築けない
融資までの流れ
1)申込 | 窓口やインターネット等で融資を申込創業計画書等の必要書類を提出 |
2)審査 | 日本政策金融公庫との面談後、諾否を決定 |
3)融資 | 日本政策金融公庫が融資を実行 |
制度融資「創業」
概要
地方自治体・信用保証協会・金融機関の三者が連携して、創業者の設備資金や運転資金を融資する制度です。
この記事では、東京都の制度融資をご案内します。
対象者
都内に事業所(個人事業者は事業所又は住所)があり、下記のいずれかに該当する方が申込の対象者です。
・新たに事業を始める方
・創業した日から5年未満の中小企業者又は組合
・分社化しようとする会社、又は分社化により設立された日から5年未満の中小企業者
特徴
■メリット
・特定創業支援等事業(※4)を受講し、特定支援特例を利用する場合は、融資の利率がさらに0.4%優遇される
・民間金融機関との関係が築けて、その後の融資につながる可能性がある
・事業用口座が開設できる
・融資が決定すれば、指定金融機関に事業用口座が開設できる ※5
※4 特定創業支援等事業とは、市区町村が連携事業者と実施する、創業支援セミナーや個別面談のこと
※5 近年、事業用口座の開設が困難になりつつある
■デメリット
・保証協会の審査が必要なため、審査に時間がかかる
融資までの流れ
1)申込 | 取扱指定金融機関に融資を申込む信用保証協会には、金融機関経由で保証を申込む |
2)審査 | 信用保証協会と面談後、諾否を決定 |
3)融資 | 申込先の金融機関が貸出を実行 |
創業支援融資
概要
東京都では、23区独自の融資制度を利用できます。
各区が金融機関へ利子補給することで、事業者の負担が軽減されます。
ここでは23区の事例として、豊島区役所の制度をご案内します。
対象者
以下のいずれかの要件を満たし、区指定の相談員の面談(3回程度)を受けて、創業計画書を完成・提出する方が申込の対象者となります。
・事業を営んでいない個人で、希望する融資額以上の自己資金を有し、必要な許認可等を受けており、以下のいずれかに該当する方
- 1ヶ月以内に豊島区内に個人で起業する計画を有する
- 2ヶ月以内に豊島区内に新たな法人を設立する計画を有する
・事業を営んでいない個人が、豊島区内で個人または法人で起業し、起業した日から1年未満の方 ほか
特徴
■メリット
・豊島区の場合は本人の利息がゼロである
・民間金融機関との関係が築けて、その後の融資につながる可能性もある
・融資が決定すれば、指定金融機関に事業用口座が開設できる
■デメリット
・としまビジネスセンターとの面談が必要なため、借入までに時間がかかる
・繰り上げ完済した場合は、利子補給が停止される
融資までの流れ
1)申込 | としまビジネスセンターに申込む |
2)面談 | 必要書類を持参し相談員と3回程度の面談を行い、創業計画書をブラッシュアップする |
3)紹介状の交付 | 創業計画書等の必要書類が完成したら、としまビジネスセンターが紹介状を交付 |
4)融資の申込 | 指定金融機関に紹介状を提出し融資を申込む信用保証協会には、金融機関経由で保証を申込む |
5)審査 | 信用保証協会と面談し、諾否が決定 |
6)融資 | 信用保証協会が保証を承諾した後、金融機関が融資を実行 |
注)紹介状の交付は、必ずしも融資実行となるものではない。事前に、指定金融機関に借入可能額などを相談することがお勧め。
創業融資のポイント
融資の実行額は期待しない
融資限度額は事業内容や事業規模・業種が影響するため、融資限度額まで借りられることは稀です。
実際に日本政策金融公庫の融資限度額は7,200万円ですが、支店で決済できる1,000万円以下の融資がほとんどです。
創業計画書とは
創業計画書とは、下記を記載した事業計画書のことです。
・創業の動機
・経営者の略歴
・商品、サービス
・事業の見通し(収支計画) ほか
融資制度によって、計画書のフォーマットが用意されていますので、窓口にお問い合わせください。
日本政策金融公庫の創業計画書:
https://www.jfc.go.jp/n/service/pdf/kaigyou00_190507b.pdf
税金の滞納は要注意
今回ご紹介した制度は、当然ですが税金の滞納があれば利用できませんので、滞納には十分に注意しましょう。更に、公共料金(携帯電話を含む)の滞納にも、注意が必要です。
最後に
創業計画書は事業の実績に代わるため、非常に重要な書類です。
創業計画書の作成は面倒かもしれませんが、ご自身のビジネスを客観的に見つめる、良い機会になるのではないでしょうか。
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